EC市場や美容テックで成長続ける仏ロレアル=児玉万里子
有料記事
ロレアル EC市場やビューティーテックで事業拡大/28
◆L'Oréal
仏ロレアルは世界シェア14%を有する化粧品のトップ企業だ。二番手の英ユニリーバ(スキン・ヘアケア部門)の売上高シェアは10%、最近10年間に両社の売上金額の差はやや広がっている。
ロレアルは、化粧品専業として100年以上の経験を有し、今日では35のグローバル・ブランドを展開している会社である。その分野は一般向けと高級品が中心(それぞれ総売上高の4割弱)で、それ以外に皮膚疾患の治療・研究に基づくスキンケア製品(アクティブ製品)なども手掛けている。製品としては、スキンケアが総売上高の約4割を占め、ほかにメークアップ、ヘアケア、ヘアカラー、香水などがある。
ロレアルは1909年に化学者のウジェーヌ・シュエレールによって設立された。シュエレール自身が開発・製造したヘアダイ(染毛剤)の新製品をパリのヘアサロンに販売したのに始まる。このとき以来、美容分野での研究開発によって画期的な新製品を創り出すことが同社の伝統となっている。
63年にパリ証券取引所に株式を上場している。パリでスタートした会社だが、今日では欧州の売上高は全体の3割強にとどまり、北米が3割弱だ。このところ新興国の売上高の伸びが著しく、全体の4割強を占めている。今日、ロレアルの売上高は年間322億ユーロ(2021年12月期、約4兆3800億円)に達している。
積極的な買収
この規模まで拡大できたのは、積極的に企業・ブランドを買収してきたからである。例えば、今日、ロレアル・パリと並んで一般向け化粧品の中核ブランドとなっているガルニエ(仏)、メイベリン・ニューヨーク(米)、NYXプロフェッショナル・メイクアップ(米)なども20世紀後半あるいは今世紀に入って取得した。
ロレアルの売上高は、長年にわたり為替レートの変動や事業の取得や売却の影響を受けてきた。これらの要素を除いた、継続している事業そのものの売上高は10年以降、毎年プラス成長(前年比3・7~8%増)を続けてきたが、20年は感染症拡大により4・1%のマイナスだった。ただ、同年も下半期には売上高は上向き、21年はコロナ禍前の19年に比べても11・3%という高い伸びを見せている。
コロナ禍のロレアルを支えたのがEコマース(ネット販売)である。Eコマースの売上高は、20年は前年から62%増、21年は同26%増となった。その結果、Eコマースの比率は総売上高の29%を占めるに至った。一方Eコマース以外の売上高は21年も19年の約9割にとどまっている。
ロレアルの営業利益(売上高から製造原価、研究開発…
残り1127文字(全文2227文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める