日本の10年金利の“本来の姿”を計算してみた=愛宕伸康
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0.25%の長期金利 “本来の姿”は1%近傍=愛宕伸康
3月に利上げを開始した米連邦準備制度理事会(FRB)は、5月3~4日の公開市場委員会(FOMC)で、予定通り利上げ幅を0.25%から0.5%に引き上げ、バランスシート縮小の6月開始を決めた。米長期金利はFRBのタカ派姿勢を織り込んで上昇ペースを速め、2月に1%台だった10年金利は5月に入って3%を超えてきた。
一方の日本銀行は、短期金利をマイナスに誘導し、長期金利を0.25%までに抑えるイールドカーブ・コントロールを堅持している。3月後半以降、無制限で国債を連日買い入れる「連続指し値オペ」を多用し、米長期金利につられて上昇しようとする日本の10年金利を力づくで0.25%に抑え込んでいる(図)。
ところで、日本の10年金利は本来何%なのか。「実質金利均等化」という長期均衡の概念を使って考えてみよう。価格が完全に伸縮的な開放経済において、均衡状態では「購買力平価」と「金利平価」が成立する。前者は、同じ財はどこで買っても同じ価格になるという一物一価が成立するときの均衡価格、後者は資金をどこで運用しても同じ収益率が得られるという均衡が成立するときの金利だ。これに実質金利の定義式を加えれば、実質金利が均等化するという結論が導かれる。
実質金利は日米一致
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そこで日米の実質金利を10年金利と消費者物価(食品及びエネルギー除く)を使って計算してみた(表)。2001年からの10年間は、米国が2.1%で日本が1.8%。かなり近い水準だ。11年からの10年間はなんと日米とも0.2%でピタリ一致する。この関係を利用すれば、13年に異次元緩和が始まった後の日本の10年金利が本来何%だったのか試算できる。
まず、新型コロナウイルスの感染が…
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週刊エコノミスト
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