円安は日本経済へのメリットが依然として大きい=斎藤太郎
有料記事
誇張されすぎている「悪い円安」=斎藤太郎
足元で、大幅な円安・ドル高が進行している。円安にはメリットとデメリットの両面があるが、最近はデメリットが強調されることが多い。
円安による日本経済への影響を見るために、海外経済の実質GDP(国内総生産、所得要因)、実質実効為替レート(価格要因)を説明変数とした輸出関数(実質輸出)を推計すると、財輸出の価格弾性値(為替が1%変動した場合の輸出の増減率)は近年低下している一方、インバウンド需要の拡大などから、サービス輸出の価格弾性値は上昇している。
円安10%による対外収支への影響を試算すると、貿易収支は2010年度時点では3・5兆円の改善効果があったが、現在(21年度)は0.8兆円と収支の改善幅が縮小している。
内訳をみると、実質貿易収支の改善幅は4.0兆円から2.2兆円へと縮小、交易条件(交易利得・損失)の悪化幅はマイナス0.6兆円からマイナス1.5兆円に拡大している。一方、サービス収支は0.2兆円から0.8兆円へと改善幅が拡大している。ただし、サービス収支は、新型コロナウイルスの水際対策として実施されている入国制限が大きく緩和されない限り、円安の恩恵を受けることは期待できないだろう。
第1次所得収支(対外金融債権・債務から生じる利子・配当金などの収支)の改善幅は1.4兆円から2.2兆円へ拡大している。これは第1次所得収支の金額が増えており、円安の恩恵をより受けやすくなっているためである。
貿易収支、サービス収支、第1次所得収支の合計、すなわち経常収支への影響をまとめると、10%の円安による経常収支の改善効果は、10年度時点の5.1兆円に対し、現在では3.8兆円ということになる。円安の効果はかつてに比べ小さくなっているが、対外収支全体…
残り560文字(全文1310文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める