米国の「インフレ終息」の兆候はこれだけある=藤代宏一
米消費者物価は鈍化まで秒読み=藤代宏一
米国では、4月の消費者物価上昇率がプラス8・3%に達するなど、インフレが猛威を振るっている。一方で、それが終息に向かっていることを示唆するデータもある。全米自営業者連盟(NFIB)が公表している中小企業調査である。
この調査は景況感のほか、雇用、賃金、価格設定スタンスなどを集計している。まず、調査のヘッドラインである景況感指数はパンデミックの最悪期にあたる2020年4月に近い水準まで落ち込み、経営環境の悪さを浮き彫りにしている。背景は供給制約と考えられる。というのも、典型的な不景気とは異なり、今回は旺盛な需要が存在するからである。
「最も深刻な経営課題」について、「売り上げ不振」と回答する企業の割合は極めて低水準にあり、企業がコスト増に苦しんでいる様子がうかがえる。
もっとも、供給制約の深刻度合いは徐々に和らいでいる模様だ。調査項目のうち「労働者不足を指摘する企業の割合」は依然高水準ながら、過去数カ月は緩やかな低下基調にある。求人件数が歴史的高水準で推移していることからも明らかなように、企業の人手不足感は強いものの、復職を果たす人が増加したことで、最悪期を脱した可能性がある。
また、今後3カ月の人件費計画について問う項目も、低下基調にある。この指標は平均時給と一定の連動性を有するため、賃金インフレ終息の兆候と捉えることができる。
実際、4月雇用統計で示された平均時給は前年比プラス5・5%と異常な伸びであったが、3カ月前比年率ではプラス3・7%まで鈍化し、瞬間風速の弱まりが示されていた。上昇率の鈍化は、賃金が「インフレ負け」するとの見方に立てばネガティブではあるが、そもそもインフレの原因が賃金上昇であるとの見方に立てばポジティブである。
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週刊エコノミスト
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