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教養・歴史 書評

実は「平安」でなかった平安時代=今谷 明

古記録から描く庶民の生活

 摂関政治や女房文学など、華美で温和なイメージがある平安時代だが、実は物騒な時代でもあった。花山上皇が摂関の一族から弓を射かけられ、宮廷内では公卿(くぎょう)が殴り合いのけんかをしたなどは一例である。

 盗賊の横行も甚だしかった。永久2(1114)年には丹波(たんば)、但馬(たじま)など山陰道出身の盗賊30人余りが京中を荒らし回り、大枝山(おおえやま)で盗品を山分けしているのが検非違使(けびいし)に摘発された。これを記録したのは検非違使の別当(今の警視総監に相当)だった藤原宗忠の日記『中右記(ちゅうゆうき)』である。大枝山の鬼(酒呑童子(しゅてんどうじ))退治の伝説はこれをもとに生まれたのではないか。

 なにしろ武士・武家が発生した時代なのだから、治安悪化は当然だが、平安時代という呼称と史実との落差が大きすぎるのだ。

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