脱炭素と経済的メリットをつなぐ金融制度とは=藤井秀道
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気候変動は経済の一大リスク
世界の金融機関も脱炭素に取り組んでいる。気候変動に伴う自然災害で被る損失は甚大だからだ。
市場メカニズムで「脱炭素」加速
「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2021年8月に発表した第6次評価報告書での結論だ。同報告書では、さらに「人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧などの極端現象に既に影響を及ぼしている」と指摘している。こうした気候変動に伴う影響をどの程度、重視すべきか。この質問への答えとなり得る内容が、世界経済フォーラムが毎年発行する「グローバルリスク報告書」に記載されている。
世界経済フォーラムでは、主要国の閣僚や経済の専門家が出席し、今後の世界経済情勢について議論。参加者によるアンケート結果などを基に、世界経済に深刻な影響を与える脅威について分析し、毎年公表している。グローバルリスク報告書では世界経済に深刻な影響を与えるリスクについて短期、中期、長期の三つの時間軸で、そのリスクが発生する可能性を順位付けている。
今年1月に発表された22年版の報告書で紹介されている順位をみると、どの時間軸においても異常気象もしくは気候変動への適応失敗といった気候変動問題に関するリスクが上位となっており、経済に悪影響を与える可能性が高いことが読み取れる。加えて、今後10年間における各リスクが世界経済に与える影響のランク付けでも、気候変動関連リスクが上位に上がっている。
この結果から、気候変動問題が世界経済に影響を与える可能性は高く、その影響度も大きいと経済・社会分野の専門家が認識していることが分かる。気候変動問題対策は世界経済の安定的な成長を達成する上で最も優先すべき課題の一つということだ。
災害損害の3割は日本
こうした状況の中で、気候変動問題の解決に向け、世界的な脱炭素に向けた取り組みが進んでいる。日本においては、30年度の温室効果ガスを13年度比で46%削減することを目指すと表明。この目標達成のための方針として、21年10月に第6次エネルギー基本計画を閣議決定し、発電時に二酸化炭素(CO2)を発生させない再生可能エネルギーを主力電源化とすることが示された。
また、21年のコーポレートガバナンス・コード(企業統治の指針)の改定と東証再編に伴い、プライム市場に上場する企業を対象に、気候関連財務情報を開示する枠組み(TCFD)に沿った形での情報公開が義務付けられた。TCFDでは自社の気候関連情報について(1)ガバナンス、(2)戦略、(3)リスク管理、(4)指標と目標──の四つの項目について、開示が求められる。
これらの項目に沿って、気候変動が取引先に与える影響(収量の変化・原材料の価格変動)を含めて情報開示を行う企業がすでに多く存在…
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週刊エコノミスト
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