週刊エコノミスト Online株式市場が注目!海外企業

主軸はコーヒーマシンに調理家電 イタリアのデロンギ=児玉万里子

コロナ禍でデロンギの売上高は大幅に伸びた
コロナ禍でデロンギの売上高は大幅に伸びた

De’Longhi 巣ごもり消費で売上高急増=児玉万里子/35 

 イタリア北東部のベネト州トレビソを拠点とする小型家電メーカー、デロンギはコーヒーマシン、特にエスプレッソマシンで世界的に有名な企業だ。調理家電(家庭用調理機器)でも大手の一角を占めている。グローバルな大手家電メーカーと異なって小型製品に的を絞っており、2021年12月期の売上高も32億ユーロ(約4480億円)と、特に巨大企業というわけではない。

 デロンギは1902年に家電の交換部品などの下請け工場として創業した。戦後は電気機器を製造し、74年に初の自社ブランドの住宅用オイルヒーターを発売。80年代にはブランドの知名度も高まり、イタリア国外へ進出した。

 現在の事業の中核となっているコーヒーマシンに進出したのは93年である。03年に最初の自動コーヒーマシンを発売、07年には全自動エスプレッソマシンの世界トップ級のメーカーになっている。この間、04年に食品業界の巨人、スイスのネスレグループのネスプレッソと協業を開始したことが奏功した。ネスプレッソは、調整したコーヒーの粉のカプセルを専用の抽出機に装着してエスプレッソコーヒーを抽出する家庭用システムで、デロンギもこのシステムに機器を提供する一社として参加している。

 二つ目の事業の柱は調理家電である。01年に「ケンウッド」ブランド(英国)、12年に「ブラウン」ブランド(米国)を取得し、ハンドブレンダー(軸が回転することで撹拌(かくはん)できるハンディータイプのキッチン家電)やフードプロセッサーなどを提供している。

事業再編で躍進

 同社にとって、大事なポイントとなったのは、10年代の事業の選択と再編である。11年に業務用機器の事業を分社化し、15年には業務用空調設備事業を三菱電機に譲渡。一方、17年にスイスの業務用エスプレッソマシンメーカーのエバシス、20年には米国のブレンダーのブランドなどを買収した。

 今日、デロンギの売上高の約半分はコーヒーマシン、約3割が調理家電、ほかにオイルヒーター、アイロン、ポータブル空気清浄機などを手掛けている。製品の企画設計・デザインはイタリア国内、製造は中国とルーマニアに拠点を有している。この間、01年には株式をミラノ証券取引所に上場した。

 デロンギの売上高は12〜19年は毎年1ケタの増加にとどまっていたが、その後は新型コロナウイルス禍を背景にした生活スタイルの変化や家庭での調理への関心の高まりにより、コーヒーマシンや調理家電の販売数量が増え、売上高が大きく伸びている。特に、21年12月期の売上高は前期に比べ37%増加し、新規に取…

残り1109文字(全文2209文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事