EC拡大とコロナ禍を追い風に 物流不動産REITのプロロジス=小田切尚登
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Prologis 投資や買収計画続く米国物流施設=小田切尚登/36
プロロジスは米国の物流不動産を対象とする不動産投資信託(REIT)だ。倉庫を中心とする物流施設の投資、開発、運用を行う会社として世界のリーダー的存在だ。米国に本社を置き、日本にも進出、全世界で4736棟、計10億平方フィートの物件を所有し、運営している。
世界の上場REITの中では、アメリカンタワー(無線通信インフラに特化したREIT)に次いで時価総額で世界第2位の規模を誇る。所有・運営をしている物件の資産額の合計は1039億ドル(約13兆9226億円)で、地域別の内訳は米国61.4%、その他アメリカ4.8%、ヨーロッパ21.7%、アジア12.1%となっている(2021年12月期)。
テナント顧客としてはアマゾンが最大で、賃料収入全体の7.0%を占める。それに続くのがフェデックス(2.1%)、ホームデポ(1.9%)、ジオディス(1.1%)、ウォルマート(1.0%)となっている。
物流不動産業界には追い風が続いている。最大の理由はアマゾンを代表とするEコマース(電子商取引)による販売の増加だ。オンラインは幅広い品ぞろえを顧客が期待するため、リアル店舗に比べて3倍程度のスペースが必要だといわれる。そのため倉庫の需要が急増した。コロナ禍がそれにさらに拍車をかけた。
物流施設は消費者に近い立地が重要になる。全費用の半分前後にも達する輸送費の抑制と、消費者にタイムリーに届ける必要があるためだ。
容易でない倉庫建設
物流施設の需要が高い一方、米国の大都市では倉庫に適した用地を探すのは難しい。閉鎖されたショッピング・モールなどを倉庫に再利用したいところだが、配送車両によって増える交通量や騒音の拡大などに対する規制があり容易ではない。倉庫が建設されると、トラックが24時間行き来するため、近隣の居住者は建設を嫌がる傾向がある。また、商業施設と比べると街の活性にもあまりつながらないとみられている。そのため需給がいつもタイトなのが物流不動産なのだ。
プロロジスの株価は09年以降右肩上がりで上昇してきた。しかし、今年に入って株価にも陰りが出てきた。4月28日の173ドル台の高値を付けてから6月13日には117ドル台と、3割超も下落したのだ。アマゾンが自ら保有する倉庫スペースが大きくなり過ぎたとして、一部売却するというニュースが出たことがきっかけだった。
だが、プロロジスの業況は引き続き良い。今年3月末時点で物件の98%が賃貸契約済みで、75%の既存顧客が再契約をしている。リース期間は平均5年程度。近年は賃料の相場が大きく上昇してきたため、今後も契約更改時に賃料が上がっていくことが見込まれる。
財務面でも優れている。一般的に不動産セクターは借り入れの比率が自己資本より高くなる傾向にあるが、プロロジスは借り入れが自己資本…
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週刊エコノミスト
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