巨大中国に自前で倉庫や配送人員 EC物流大手の京東物流=富岡浩司
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京東物流(JD Logistics) 上海ロックダウンで評価されるEC物流=富岡浩司/37
京東物流(JDロジスティクス)は、中国最大級の物流会社の一角だ。長距離輸送から「ラストワンマイル」と呼ばれる最終顧客への配送、倉庫保管も含む運輸業務、顧客企業の物流業務を請け負う総合物流サービスの提供を行う。食品を生産地から消費者まで冷蔵・冷凍して流通させる低温物流(コールドチェーン)や海外ビジネスも展開する。
2007年に中国で第2位のEC(電子商取引)企業である京東グループの物流部門として設立された。17年4月に独立法人化し、外部顧客との取引を開始し、順調に規模を拡大した。21年5月に香港証券取引所に上場した。
20万人で即日配送
同社の強みは豊富な資産を保有していることだ。親会社の京東グループは米アマゾンと同じようなマーケット・プレースと呼ばれる自社直販型のビジネスモデルでEC事業を拡大した。
巨大な中国市場で、自前で在庫管理や輸送、配送を手掛けてきたため、膨大な倉庫と配送人員を保有している。これが、運送や宅配、倉庫の業者とそれぞれ個別に契約する同業EC企業とは大きく異なる点だ。
倉庫施設は中国最大規模といわれる。21年末時点の自社保有の倉庫は1300カ所、配送センターは7200カ所を超える。また、受託管理する顧客の倉庫や保管施設も入れた総面積は2400万平方メートルに達している。配送人員は21年末時点で20万人を超える。自社で配送人員を抱えているからこそ、社員教育が行き届き、配送時のトラブルが一般的な宅配業者に比べて少ないとの定評がある。
倉庫のハイテク化も進め、無人搬送車や先進ロボット技術も導入している。海外では英国やオランダ、豪州など6カ国に、製品受け入れから出荷までをコンピューターで一元管理する自動化倉庫を保有している。
即日配送を強みとしている。21年実績では個人向けの小売り部門が受注した商品の90%が即日配送されている。迅速な配送が可能になったのは同社が得意な取扱商品と関係がある。
全事業は日用消費財や家電家具、アパレル、3C(パソコン、家電、携帯電話)、自動車、生鮮食品の6部門で構成されるが、このうち日用消費財と家電家具、3Cの3部門で売上高の65%を占めている。
これらの製品は市場動向に基づいた需要予測が比較的容易なため、顧客からの発注を待たず、AI(人工知能)などを活用して消費者に近い倉庫に事前に在庫を準備することができるためだ。
21年の同部門売上高は前年比27.8%増の711億元(約1兆4220億円)と、全体の約68%を占めた。親会社や関連会社を除いた外部顧客向けも54.7%増の255億元(約5100億円)と高い伸びとなった。
大手顧客の開拓も順調で、年間売上高1000万元(約2億円)以上の顧客数は前年比65.3%増の296社で、1000万元…
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週刊エコノミスト
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