プチプチから真空包装まで 米食品包装・製品保護材のシールドエアー=児玉万里子
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Sealed Air 一般用語にもなった気泡緩衝材=児玉万里子/41
米国のシールドエアーは、包装に使われる気泡緩衝材を世界で初めて製造した会社である。1957年に2人のエンジニアが、プラスチックシートから偶然製造し、60年に同社を設立した。同社の気泡緩衝材は、プラスチック・シートに成形した突起の中に閉じ込めた空気の圧力を利用するもので、その登録商標「Bubble Wrap」(バブル・ラップ)は、同種の包装材料の一般用語となっている。
バブル・ラップは軽量だが衝撃に強く、包装材料として広く使われるようになった。国際運送が活発化する時代の到来も、同社事業の拡大をもたらした。包装材の種類を多様化し、販売地域も北米から欧州、アジア・太平洋へ展開している。現在の売上高は、北米を中心とした米州全体が総売上高の3分の2、欧州が2割強、アジア・太平洋が2割弱になっている。
今日のシールドエアーにとって、第一の製品分野は食品包装である。98年に真空包装技術のクライオバック事業を米化学会社W・R・グレースから取得し、真空・ラミネートなどの食品包装材料や技術、包装機械、袋詰め装置などを提供している。
そして第二の製品分野は製品保護材料である。これは創業以来のバブル・ラップなどの包装保護製品(包装材料、包装システム、包装機など)、熱で縮む包装資材のシュリンク包装製品のほか、用途に応じた多種類のフィルム材料などを提供している。
低利益事業を売却
シールドエアーの業績をさかのぼると、2011~16年は売上高がそれ以前に比べて急増し、その後17年に急減している。これは、グループ売上高に衛生クリーニング関連事業の米ディバーシーの売上高が11年から加わっていたことによる。17年にディバーシーを売却する際に、食品包装売り上げの一部(食品衛生関連)も売却しており、その結果、同年の売上高が前年から34%も減少した。ただ、事業売却の影響を除いた継続事業の売上高は6%増加していた。
ディバーシー売却によって、シールドエアーは今日の食品包装と製品保護材料という二つの事業に経営資源を集中させた。その結果、直近5年間は二つの事業の売上高はいずれも増加傾向にあり、特に21年はそれぞれ伸びが加速している。同年の全体の売上高は、前年から13%増えて55億ドル(約7425億円)に到達し、製品の販売価格の上昇と販売数量の増加が売り上げ増を支えている。米国以外の売上高が全体の半分近くに達しており、為替レート変動の影響も小幅ながら受けている。
多額の有利子負債
ディバーシー売却の影響は、営業利益(売上高から製造原価と販売管理費を引いたもの)にも表れている。17年に営業利益の額は大きく減ったものの、その後は回復に向かっているのは、利益率の低かったディバーシーを売却し、食品包装の利益率が改善しているためである。21年の売上高営…
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週刊エコノミスト
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