世界5位のエネルギー企業 仏最大の上場企業トタルエナジーズ=小田切尚登
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TotalEnergies エネルギー価格上昇から恩恵=小田切尚登/42
トタルエナジーズは石油とガスを中心とするエネルギーの採掘・生産・発電・輸送・精製・販売までの全段階を垂直統合で行う世界有数のエネルギー企業である。本社をフランスに置き、130カ国以上で販売を行い、29カ国で石油やガスの生産、化学製品の製造も行う。70カ国以上で約1万6000件のガソリンスタンドを運営している。
前身のフランス石油会社はフランス政府により1924年に創立された。第二次世界大戦以降、長期にわたり英シェルや英BPなどと並んで世界の石油生産で支配的な役割を果たしてきた。中東やアフリカなど、フランスと歴史的関係が深い地域に対して独特の強みを持つ。現在、世界のエネルギー企業の中で時価総額では、サウジアラムコ、米エクソンモービル、米シェブロン、シェルに次いで第5位で、フランスでは最大の上場企業でもある。
過去3年間、世界のエネルギー市場はかつてないほどの大きな変動に見舞われた。20年は新型コロナで世界中の経済活動が停滞し、原油価格が一時、史上初のマイナスまで落ち込んだ。21年には一転して経済活動が復活してきたため、原油市場は回復した。そして今年2月のロシアのウクライナ侵攻を受け、欧米や日本など西側諸国からの経済制裁への対抗策としてのロシアからのエネルギー供給懸念で石油・ガス価格がさらに大きく押し上げられている。
市況で変動する業績
トタルエナジーズは莫大(ばくだい)な石油・ガスを保有しているため、その業績はこれらの価格の変動に直接的な影響を受ける。20年は価格下落により赤字に転落し、73億ドル(約9900億円)の純損失を計上したが、21年には石油・ガス価格が上昇したため業績は大きく改善し、163億ドルと2兆円を超える最終黒字となった。
セグメントごとに見ると、上流の採掘・生産部門の営業利益(21年)は104億ドル(約1兆4040億円)で、全体の52%を占める。前年比4・4倍と絶好調だった。ガス・再生エネルギー・電力統合部門は62億ドル(約8370億円)で、全体の31%だった。こちらも前年比3・5倍と非常に良かったが、天然ガス市況の上昇を受けた液化天然ガス(LNG)の評価増が大きく貢献した。下流部門(精製・化学・販売)は35億ドル(約4725億円)で全体の18%、前年比56%増であった。ガソリンなど石油製品と原油の価格の差の利益率(精製マージン)の拡大と石油化学部門の増益が寄与した。
今年に入り、エネルギー価格の一段の上昇により、業績はさらに上向いている。本年第1四半期の営業利益は94億ドル(約1兆2690億円)で、前年同期比29%増となっている。しかし、ロシア向け資産償却を41億ドル計上したため、純利益は15%減の49億ドルとなった。
多大な利益に課税
トタルの本部があるフランスは欧州…
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週刊エコノミスト
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