経済・企業

米国 バイデン政権のEVインフラ法が呼び水に サブスク、ロボットも登場 土方細秩子

大手量販店ターゲットの駐車場にはEV充電器が設置(カリフォルニア州) 筆者撮影
大手量販店ターゲットの駐車場にはEV充電器が設置(カリフォルニア州) 筆者撮影

 EV(電気自動車)の普及が急激に拡大する中国、米国、欧州では充電インフラの整備も急ピッチで進む。米国では巨大市場となるEV充電器ネットワーク構築を巡り、企業間の競争が激化している。»»特集「充電インフラ最前線」はこちら

まだ少ない急速充電器

「全米の高速道路ネットワーク上に最低でも50マイル(約80キロ)に1カ所の電気自動車(EV)用充電ステーションを設置する」──。これが今年6月に発表された米バイデン政権によるEVインフラ法の骨子だ。

 EVインフラ法の総予算は75億ドル(約1兆250億円)で、うち50億ドルが各州政府に高速道路充電ネットワーク設定のために配布され、残る25億ドルは一般道路上などに使われる予定だ。充電ステーションの事業者による補助金申請も始まり、「使いやすく、場所が分かりやすく、料金の支払い方法などもシンプルな充電ステーション」が求められている。

 今年8月時点で米国の全車両におけるEV比率は6%程度とまだまだ低い。PHV(プラグインハイブリッド車)とHV(ハイブリッド車)を合わせたシェアも12.6%にとどまる。しかし、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ(GM)の大手が商用車に力を入れ、また一般消費者向けのEVラインアップの充実も始まっている。EV比率は今後、年率24%以上の上昇を見せ、2030年には全車両の3割を超える、という予測もある。

 EV普及に欠かせないのが充電ステーションの充実だ。米エネルギー省によれば、現時点で全米の公共充電ステーション数は4万7243カ所、充電器数は11万7816台である。ただし、「レベル1」と「レベル2」の充電器が8割強を占め、急速充電が可能なDC(直流)充電器は2万基程度にとどまる。

 レベル1とは1時間の充電で走行距離5マイル(約8キロ)程度で、主に家庭での夜間充電に使われるもの、レベル2は1時間当たり14~35マイルの充電が可能、DCは30分の充電でゼロから8割程度まで急速充電が可能となるものを指す。

 バイデン政権が目指す50マイルごとの充電ステーションは、当然ながらDC充電器によるものだ。現在全米の高速道路には少なくとも25マイルごとに1カ所のガソリンスタンドがあるが、EVに対してもこれと同様のガス欠ならぬ電欠の不安なく長距離ドライブを可能とすることを念頭に置いている。

テスラが充電網を開放

 この巨大市場を巡り、EV充電器ネットワーク構築を行う企業での競争が激化している。現在、全米最大のネットワークを所有するのがチャージポイント社で、およそ3万カ所を展開している。ただし、その多くがレベル2だ。

 DCネットワークの最大手は独フォルクスワーゲンの米国法人が所有するエレクトリファイ・アメリカ社で、フォードとも提携している。一方、GMはカリフォルニアに本社があるEVgo社と提携し、25年までに全米に2700カ所の設置を目指す。ただし、これら大手3社を合わせてもDC充電器の数は7000基程度だ。

 そこで今、注目されているのが、1社で1万3000基ものDCネットワークを有するテスラの存在だ。同社は今年2月、欧州で…

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週刊エコノミスト

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