国際・政治 FOCUS
英国民の半分が「失望」のトラス新政権が抱える課題 高山武士
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英国で9月6日にリズ・トラス新首相が就任した。ジョンソン前首相の辞任に伴い、与党保守党の党首選挙が行われ、決選投票の結果、ジョンソン政権で外相を務めたトラス氏が約57%の得票率(投票率は82.6%)を獲得し、リシ・スナク前財務相を破った。
トラス新首相はロシアや中国に対して強硬な姿勢を示し、財政面では減税や国民保険料の引き下げといった「小さな政府」を標榜(ひょうぼう)してきた。決選投票の候補者を決める事前の議員投票では、5回実施された全てでスナク氏が首位となったが、決選投票では党員からの支持を集めたトラス氏が勝利した。財務相を辞任してジョンソン首相と対立したスナク氏よりも、最後までジョンソン首相を支えたトラス新首相に対して好感が集まった可能性がある。また、もともとエリート的なスナク氏よりも庶民派のトラス新首相の方が党員人気が高かったということも背景にあろう。
ただし、国民のトラス新首相への期待値は低い。選挙直後に実施された世論調査では、英国民の50%がトラス氏の首相就任に「失望している」と回答、「満足している」と回答した22%を大きく上回った。
EUとの溝深まる
国民が求める最も優先度の高い課題は、光熱費を中心とした生活費上昇対策、つまりインフレ抑制である。英国の消費者物価上昇率は10%を超え、他の主要先進国と比較しても高い。その理由として①電力・暖房のガス依存度が高く、欧州ガス市場の価格高騰の影響を受けやすい、②中高年層が労働市場から撤退し復帰していない、③欧州連合(EU)離脱によるEU市民の自由移動の停止や非関税障壁の発生──などが挙げられる。
①は欧州大陸全体、②は米国も直面しているが、英国はこれらの「悪いところ取り」の状況となっている。加えて③のような特有の制約がある…
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週刊エコノミスト
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