経済・企業

韓国攻勢 EV3台につき充電器1基を設置済み 清水岳志

ソウル市内でも目につくEVタクシーもアイオニック5 筆者撮影
ソウル市内でも目につくEVタクシーもアイオニック5 筆者撮影

 政府と二人三脚でEVシフトを進める背景には強い危機感がある。国際的な自動車メーカーが少ないことも“強み”になる。

今年1~7月の新規登録タクシーは4割がEV

 韓国の完成車最大手の現代自動車グループが車両のEV(電気自動車)化に積極的に取り組んでいる。昨年、世界で約667万台を販売し、グループ・ブランド別で世界4位となった現代自グループ(傘下の起亜含む)は、昨年から専用プラットフォーム(車体基盤)を採用した新型EV「アイオニック5」と「EV6」を投入し、電動化へのシフトを本格化させた。

 アイオニック5とEV6の登場は、韓国国内でのEVへの関心を高める起爆剤となった。

 米テスラの人気や欧州完成車メーカーが韓国にEVを投入し始めたこともあり、昨年の韓国EV販売台数は9万6666台と、20年の約2.2倍を記録した。

 今年上半期は前年同期比73.5%増の6万8528台のEVが売れ、新車全体に占めるEVの比率はついに1%を超えた。通年では10万台超の期待も高まる。現代自のEV販売台数は101.9%増、起亜が161.7%増と好調を維持している。

生命線は「海外」

 アイオニック5とEV6は、世界でも人気が高い。今年1~8月に世界で売れた販売台数はアイオニック5が4万515台、EV6が3万8523台だった。世界的な半導体不足で納品時期の遅れなどが生じているが、EV6はすでに昨年の2倍以上を売り上げ、アイオニック5も昨年通年に迫る勢いだ。

 現代自グループは、鄭義宣(チョンウィソン)氏の陣頭指揮の下、いち早く内燃機関車から電動化へのシフトに取り掛かった。世界での販売を伸ばさなければ、将来の自動車市場で生き残れないという危機感があったためだ。

 現代自・起亜は、国内自動車市場で圧倒的な73.8%のシェア(2021年基準)を誇るが、国内の販売台数126万台は海外(540万台)の2割強に過ぎない。利益の大部分を海外市場で出しているのが実情だ。

 さらに、欧米で強まる内燃機関車への規制強化も影響した。欧州ではドイツや英国などが30年、フランスは40年以降に内燃機関車の販売を実質禁止する方針で、米国でもカリフォルニア州が35年に内燃機関の新車販売を禁止する。

 これに伴い、欧米の完成車メーカーがEVのラインアップを強化する動きを見せている。国内よりも欧米など海外市場が主戦場の現代自グループとしてはEVで後塵(こうじん)を拝するわけにはいかなかった。

 現代自は高級車ブランド「ジェネシス」と合わせて、30年までにEVのラインアップを17種に拡充する計画を発表している。内訳は現代自が11モデル、ジェネシスが6モデル。今年7月にはアイオニックブランドで2モデル目となるスポーツセダン「アイオニック6」を初公開し、まもなく発売する予定だ。

 起亜は26年までにEVラインアップを7種に増やす。7月には、EV6に次ぐ2モデル目となる「EV9」のコンセプトモデルをお披露目している。

 30年までに現代自は187万台のEVを世界で販売し、シェア7%の達成を目指す。起亜は同年までに88万台以上のEVを販売する目標を掲げている。

 ソウル市内では、アイオニック5やEV6のタクシーがよく目に入ってくる。

 政府や自治体が支給する補助金によって購入価格が安く済むだけでなく、内燃機関車に比べて燃料コストもかからないため、EVを選ぶ個人タクシーのドライバーが増えていることが、その理由だ。

 韓国の自動車情報会社、カーイズユーデータ研究所によると、今年1~7月に新規登録されたタクシー(2万296台)のうち、EVは36.4%(7394台)を占めた。20年は2.6%に過ぎなかったが、昨年は14.4%に急上昇。アイオニック5とEV6の登場が大きな影響を与えた。実際に、今年登録された7394台のうち、アイオニック5は3253台、EV…

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週刊エコノミスト

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