円安で増益が期待される企業は? 大川智宏
有料記事
表の拡大表示
今年3月に1ドル=115円近辺だったドル・円レートが、一時146円台に達する異常な円安が進行している。一般に、過度で急激な円安は輸入物価と製造コストの高騰を招くが、一方で少なからぬ外需への依存で成り立つ日本株市場にとっては為替差益としても作用しうる。
しかし、円安進行のスピードが速すぎるため、企業もアナリストもドル・円レートの前提を形成できないのが現状だろう。これは、逆説的には投資家の期待も分散していることと同義だ。
そこで、この為替の不完全な織り込みをテーマとして考えたい。ただ、為替変動の業績への影響を推計するのは容易ではないため、あくまで厳密さを無視した大枠の推計にて銘柄を選定する。具体的な方法は、以下の通りだ。
①母集団は東証株価指数(TOPIX)構成銘柄(2168銘柄)のうち、営業利益、経常利益(ともにコンセンサス予想)、海外売上高比率(前期実績)、ドル・円レートの前提(会社発表値)が取得可能な銘柄。減益予想の銘柄に投資するうまみはないため、増益予想の銘柄に限定した。
②足元の四半期決算発表に織り込まれていない2022年7月1日以降の平均ドル・円レート(1ドル=138.47円)と各社のドル・円レートの前提との乖離(かいり)を「ドル・円ギャップ」とする。
③直近の地域セグメント別売上高のうち、米国が絡む売上高が全体に占める比率を「ドル・円売上高比率」とする。
④②と③を乗じ、この数値を理論上の「ドル・円インパクト」とする。
⑤コンセンサス予想営業利益と④を乗じ、この数値を「理論経常利益(営業外損益を為替差益と仮定)」とする。
⑥⑤と経常利益の乖離を計算し、これを「ドル・円ポテンシャル」とする。
この⑥が大きいほど、円安が業績予想に織り込まれていない可能性が高いと仮定する。もちろん、営業外損益の要因は無数に存在するため、円安が進む現状で営業利益と経常利益の…
残り430文字(全文1230文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める