新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online 緊急特集 世界大動乱 

《緊急特集》瞬間的に条件が出そろった「有事の日本株買い」=大川智宏

日本株は地理的なリスクが小さい
日本株は地理的なリスクが小さい

 ウクライナ情勢を受け、株式市場が混迷している。2月24日にロシアによる軍事侵攻が開始され、日経平均株価も一時600円を超える下落を見せたが、その後一転して急激に反転を見せるなど乱高下の状態だ。一般的には、過去の多くの事例から、地政学リスクの高まりは株式市場の買い場といわれることが多い。しかし、今回だけは事情が異なる。「タイミング」が最悪なためだ。

 昨年から世界中で原材料や資源高に伴う強烈なインフレが発生し、1月の米国の消費者物価指数は対前年同期比で7・5%、欧州各国も5%程度の驚異的な上昇となった。この環境下で、資源大国ロシアと欧米との関係悪化により、天然ガスや原油の高騰を助長させる可能性が高い。特にドイツなどの欧州先進国は、インフレとコロナ禍の長期化により、経済の回復途上で引き締めへとかじを切らざるを得ない厳しい状況だ。

 また、今回の紛争は落としどころが見えないのも問題だ。NATOは、ロシアの主張を認めるわけにはいかない一方、ロシアを徹底攻撃して破綻させても事後に経済危機を招く。2020年のロシアの名目GDP(国内総生産)は世界11位で、オーストラリアやスペインよりも上だ。収束後の世界経済への影響を考慮すると、結託してロシアをたたけばいいという単純なものではなく、事態は想定以上に長期化する恐れがある。

地理的にリスク小

 日本の立ち位置だが、株式投資の観点からは「日本株が光るのは今しかない」の一言に尽きる。日本は経済成長が乏しく、平時は投資魅力度に欠けるが、今この瞬間に限れば日本株は魅力的だ。

 まず、日本は軍事と地理上の問題で、今回の混乱で直接的な戦争のリスクを負う可能性は低い。また、コロナ禍対応への保守性から他の先進国に比して景気の回復が遅れたことで、仮に世界の景気が鈍化してもダウンサイドが少ない。加えて、資源高は他国同様にマイナス要素だが、1月の日本の消費者物価は対前年同期比で0・5%程度の上昇と、欧米に比して極端に低く悪影響も軽微だ。さらに、世界の中央銀行が利上げなどの引き締めに走る中で、日銀は現状の緩和スタンスを貫く可能性が高い。ドル・円や過剰流動性の観点でも日本は有利な立場だ。まさに、この瞬間だけは「有事の日本株買い」と言っていいほど有利な条件がそろっている。

 特に混乱が長期化する恐れがある以上、欧州を含めた海外売上高比率の高い銘柄は避け、日本の内需成長銘柄か資源高の流れに乗る形で資金を振り向けるのが賢明だろう。事実、ウクライナ不安が顕在化した2月第4週の業種の株価変化率の上位には資源関連の鉱業、石油・石炭製品や、内需成長株の主力としてのサービス、情報通信が名を連ねる。状況を冷静に判断し、目先は嵐のような相場を乗り切ることに注力したい。

(大川智宏、智剣・OskarグループCEO兼主席ストラテジスト)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事