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COP27が盛り上がりに欠ける切実な理由 大場紀章
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“復活”する石炭火力 「気候賠償」迫られる先進国
11月6日から開催のエジプト・シャルムエルシェイクでの国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は、前回の英国であったCOP26と比べて一般の人々の関心の低さは否めず、「盛り上がりに欠ける」との声も聞こえる。
それは仕方がないかもしれない。COP26は、米国で気候変動問題に積極的で国際協調重視と目されたバイデン政権が誕生し、世界中のほとんどの国が期限つきのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)宣言を行った後の、“初開催”。COP史上最大級の関心と盛り上がりだった。
金融は分裂危機
しかし、注目度低下の理由はそれだけではない。現在の世界は、深刻なエネルギー・地政学的な危機にある。コロナ禍からの復興で需要が急激に拡大し、エネルギー価格が高騰、世界的に高インフレとなった。
電力不足に苦しむ中国とインド政府は国内石炭の増産を指示し、石炭火力をたき増している。さらにロシアによるウクライナ侵攻で、ロシアからの天然ガス供給のほとんどが停止し、欧州各国の電力卸売価格が2年前の20倍以上に高騰。欧州でも石炭火力がたき増しされている。高い光熱費に苦しむ消費者も、経済対策などに追われる世界各国の政治的資源も、気候問題に振り分ける余裕がない。
実際、COP26の議長国・英国のスナク新首相は、国内業務に専念するとの理由でCOP27不参加を発表した。昨年は新たな温室効果ガスの削減目標を提出した国・地域が124もあったのが、今年は現時点でわずか24。また投融資先に対して、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指す金融機関の連合体「G…
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週刊エコノミスト
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