半導体市場 来年後半に回復へ 南川明
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半導体市場はインフレ、ウクライナ紛争や中国ゼロコロナなどの出口が見えれば、23年後半には回復に向かうだろう。>>特集「半導体 反転の号砲」はこちら
DX、GX投資がけん引
世界の国内総生産(GDP)成長率と民間最終消費支出(個人消費)には過去20年間強い相関性が存在している。これはGDPの中で個人消費の占める割合が50%以上と高いことが原因である。しかし、コロナで大きく落ち込んだGDPが反転した2021年にGDPと個人消費は大きく乖離(かいり)した。コロナ禍での巣ごもり需要が行き過ぎていたことが分かる。22年現在、その反動で個人消費が大きく落ち込んでおり、パソコン、テレビ、スマートフォン、白物家電の需要が大きく落ち込み生産調整が起こっている。22年10~12月期からマイナス成長となっているが、この調整は通常1年程度で反転しており、23年後半には回復が始まることが予測できる。
さらに近年のインフレ、ウクライナ紛争、中国ゼロコロナ対策で、特に欧州と中国での個人需要低迷に拍車がかかっている。ドイツでは今年の冬は1年前と比較して電力料金が6倍に跳ね上がっている。この冬はますます個人消費が減速する可能性が高いと見ている。
脱炭素投資が再開
しかし、いつかはこの減速は終わり、上昇が始まる。筆者は、個人消費は23年1~3月期を底に徐々に回復が始まると見ているが、その時にインフレ対策、ウクライナ問題、中国のゼロコロナ政策の出口が見えていることが必要条件となるだろう。特にウクライナ問題が解決すれば復興需要だけで100兆円の投資が行われると試算されている。これで欧州景気はかなり底上げされるだろう。
23年下期から需要が回復する背景にマクロ経済の回復は必要条件だが、それ以外にも回復する要因は二つある。
一つ目はウクライナ紛争で止まっている、各国のカーボンゼロ政策の投資が再開することだ。多くの国がウクライナ紛争の影響で予算を軍事費に振り向けており、カーボンゼロ政策の推進がおろそかになっている。既に発表されている政策だけで500兆円規模の投資がEV(電気自動車)、再生可能エネルギー、スマートファクトリー、スマートビルディング&ホームなどで計画されている。ウクライナ紛争が収束し、これらが動き出せば10年以降のリーマン・ショック後の経済回復のために使われた200兆円を大きく上回る規模の投資となり、経済回復には一定の効果があるだろう。
二つ目はメタバース(インターネット上の仮想空間)実現に向けたデータセンター投資が始まると見ている。米マイクロソフトやグーグルなどが25年からのサービススタートを計画しており、23年後半から徐々にデータセンターへの投資をしないと間に合わない。米インテルによると、メタバース環境を構築するためにはコンピューティング性能は現在の1000倍必要だという。米メタ・プラット…
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週刊エコノミスト
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