経済・企業

企業の過度な利益圧縮による節税手法も封じ込め対象 村田顕吉朗

ドローンは節税対策にも使われていた(本文と写真は関係ありません) Bloomberg
ドローンは節税対策にも使われていた(本文と写真は関係ありません) Bloomberg

 オーナー経営者が株式を贈与する際、過度に株価の評価額を引き下げれば、国税当局が否認する可能性もある。>>特集「狭まる包囲網 税務調査」はこちら

「10万円以下の備品を大量購入してリース」という節税スキーム

 ドローンやLED(発光ダイオード)照明、工事現場用の足場などを大量に購入して外部にリースする法人税などの節税スキームが、今年度の税制改正で封じ込められた。このスキームは、経営者が自社の株式を贈与する際、株価を引き下げて贈与税を圧縮する方法としても使われていた。近年は生命保険を活用した節税スキームも規制されており、制度の穴を突くような過度な節税策には国税当局が次々と網をかけている。

 企業は日々、さまざまなものを購入・利用しながら活動している。中には長年にわたって使い続けるものもあり、そうしたものは購入時に経費として処理をするのではなく、利用期間(耐用年数)にわたって経費化する方が、適切に業績を表す点からは合理的であると思われる。そうした固定資産の購入時には、貸借対照表の資産の部に計上し、資産の種類ごとに決められた耐用年数に従って減価償却費として経費化していく。

 一方、日本の法人税法では、取得価額が10万円未満のもの、または使用可能期間が1年未満のものは資産に計上せず、購入時に損金処理することが認められている。また、10万円以上の資産であっても、比較的少額なものについては、表の通り損金処理の特例を設けている。これらの特例などにより損金処理ができれば、資産計上した際と比べて購入した期の所得は減少することとなり、企業の税負担が少なくなる。

 利益を多く出している会社が利益を抑えて税金を下げたいと考えた時に、最初に選択肢に挙がるのが「買い物をして経費を作ること」だろう。しかし、例えば500万円で社用車を購入したとしても、30万円を超えているため全額を経費にはできない。いったんは資産として貸借対照表に計上し、毎年減価償却費という形で経費化することになる(一般車の新車は6年間で償却)。

オフィス用の什器も

 今回網をかけられた節税スキームは、この特例を利用する形を取り、経費計上できる10万円以下の資産を大量に購入することで、資産計上することなく多額の支出を一気に経費化するものだ。購入する資産はドローンやLED照明、足場のほか、オフィス用の什器(じゅうき)なども対象になる。これらは購入後、リースに出して使用料を受け取り、数年かけて購入資金を回収する仕組みになっている。

 2年目以降のリース料収入は会社の収入となるため、トータルで見れば支出と収入が等しく、税負担は変わらない。いわゆる「利益の繰り延べ」だ。しかし、数百万円から数億円まで経費を作り出すことが可能で、数量による細かな調整も可能なこのスキームは、とにかく目先の税金を抑えたい企業にとっては魅力的で、それなりの数の企業がこのス…

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