高まる世界の食料保護主義 日本の「低自給率」転換迫る 柴田明夫
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ロシア、中国の肥料輸出の制限は、日本の農業生産を根底から揺さぶる。
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国際的なリショアリング(生産拠点を国内に再移転)の動きは、日本の食料安定確保に大きな影響を与えそうだ。ここ数年、世界の食料価格は、コロナ禍、異常気象、戦争(ウクライナ戦争など)によるサプライチェーン(供給網)の混乱で、高騰が続いている。これらを背景に、多くの国々は保護主義的姿勢を強めている。
国際食糧政策研究所(IFPRI)によると、ロシアのウクライナ侵攻後、食料の輸出制限を行った国は10月末時点で、ロシア、インド、インドネシア、マレーシア、トルコなど26カ国を数える。国際穀物市場は生産量に対して輸出に回る量が2割弱に限られるため、「薄いマーケット」といわれる(図)。食料の国際価格が高騰すると、生産国は通常、自国の必要量を十分に確保しようとして、輸出を制限することが多い。足元の世界穀物貿易量は約5億トンと、この15年間で倍増したものの、輸出入国ともプレーヤーが限られることから、かえって市場は不安定化している。トウモロコシの主要輸出国は米国、ブラジル、アルゼンチン、ウクライナの4カ国で、輸入は中国、メキシコ、日本などだ。ロシア、ベラルーシ、中国は肥料の輸出を制限し始めており、この影響は、世界の農業生産を根本から揺さぶる問題として、2023年に本格化する恐れがある。
国産化急務
日本では今秋から、1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」の見直し議論が始まった。同法は食糧安全保障について「良質の食料を合理的な価格で安定的に供給されなければならない」とし、そのために農業…
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週刊エコノミスト
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