国際・政治 世界経済総予測2023
新チャイナセブンが示す習総書記4期目への道 川島真
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中国共産党大会で新たに決まった最高指導部の顔ぶれからは、習近平氏の後継者は見えない。党員と国民に豊かさを提供し続けることはできるのか。
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2022年10月に開催された5年に1度の第20回中国共産党大会において、習近平氏は総書記として3期目に入り、最高指導部「チャイナセブン」(7人の党中央政治局常務委員)も4人が入れ替わった。そのラインアップは、習近平総書記のほか、李強、趙楽際、王滬寧、蔡奇、丁薛祥、李希各氏の7人。9500万共産党員の頂点に立つ人々である。この人事についてはおよそ次のようなことがいえるだろう。
第一に、習近平氏の3期目への延長は、これまで後継指名がされず、また国家主席の任期も撤廃されていたことから、いわば「既定方針」だったといえる。むしろ問題だったのは「党主席制度」の復活の有無だ。党主席制度は毛沢東時代の反省から1980年代初頭に廃止され、総書記制が採用されたのである。党主席制が党主席の「独裁」であるのに対して、総書記制は集団指導体制である。
20回党大会における党規約改正では党主席制は復活しなかったし、「習近平思想」などといった言葉も入らなかった。個人崇拝の復活を嫌う声が大きかったのだろう。だが、実際の人事は習近平派で固められた。特に、李克強首相だけでなく、汪洋氏などの市場経済を重視する改革派が排除され、若手の胡春華氏に至っては降格となってトップ24(政治局員)にさえ入らなかった。これほどまでに「異質性」を排除したことが今回の人事の特徴である。
第二に、留任した趙楽際氏、王滬寧氏は別として、新任の常務委員となった李強氏、蔡奇氏、丁薛祥氏、李希氏という顔ぶれである。習近平氏は陝西省で長い間過ごし、その後、福建省、浙江省、上海市などでキャリアを重ねてきた。そして、それぞれの時代の部下を抜てきしてきた。今回のトップ7もそうであり、新人を見れば、福建時代の部下が蔡奇氏、浙江時代の部下が李強氏、蔡奇氏(福建から抜擢)、上海時代の部下が丁薛祥氏、李希氏であり、李希氏は陝西省の関係者でもある。
このように、習近平氏としては、自らの地方時代の部下を「バランスよく」配置していることが分かる。首相は序列2位の李強氏が担当であろうが、その他については何を担当するのか判然としない部分がある。だが、いずれも習近平氏に仕えることで力を発揮してきた人々であり、彼らの中に習近平氏の後継者がいるのかどうかも分からない。習近平氏が3期目のみならず、4期目も総書記であり続ける可能性が高まった。
トップから「改革派」一掃
習近平政権の人事が「思…
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週刊エコノミスト
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