エネルギー市場はディーゼル燃料不足に要警戒 小菅努
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エネルギーの一大供給国、ロシアは中国やインドなどとの関係構築を進めており、2023年はこれまでの地図が塗り替わる展開が続く。
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2023年のエネルギー市場は多くの不確実性に直面しつつも、価格は高止まりが続く公算が高そうだ。世界的な原油の指標価格である米WTI原油先物は1バレル=70ドル水準を下値のメドに、90~100ドルまでコアレンジ(中心価格帯)が切り上がるリスクを想定している。
需要面では世界経済の減速傾向が一段と強まる見通しだが、中国のゼロコロナ政策の見直しを受けて、急激な下振れリスクは後退する見通しだ。一方、供給面ではロシア産の供給環境に不透明感が強く、さらに石油輸出国機構(OPEC)加盟国と主要非OPEC産油国で作る「OPECプラス」が減産による需給均衡化を目指す姿勢を改めて鮮明にする中、適度の需給タイト感が維持される可能性が高い。
加えて、22年はドル高がドル建て原油相場の上値を圧迫する要因になったが、23年はドル高が是正される動きも原油相場を支援しよう。特に注目すべきは、ロシア産石油の供給環境だ。主要7カ国(G7)を中心とした西側諸国は、ロシア産石油の禁輸、取引価格の上限設定など制裁措置を強化しており、国際エネルギー需給のゆがみ発生を回避できるのかは不透明感が強い。
市場では、原油よりもディーゼル燃料がボトルネックになるとみられている。ディーゼル燃料市場は、ウクライナ戦争前の時点ですでに精製能力不足から逼迫(ひっぱく)していたが、開戦後はロシアの石油精製能力が西側諸国と切り離されたことで、供給の引き締まり感が一段と強くなり始めている。欧州諸国は23年2月、ロシア産石油製品に対する禁輸措置の発動を控え、米国、中東など代替地域からのディーゼル燃料調達を増やすなどしている。
しかし、世界の石油精製能力がこうしたディーゼル燃料の貿易環境急変に対応できない場合には、トラックや列車などの輸送部門を筆頭に、農業や建設、産業部門でも強力なコスト高に直面する可能性がある。物価全般に対する上方圧力としても警戒が必要な状況だ。
化学、鉄鋼などにも影響
天然ガスに関しては、ウクライナ戦争後に欧州各国が在庫積み増しを急いだ結果、22年11月末時点の地下貯蔵在庫の充填(じゅうてん)率は90%を超えている国が多く、今冬の大きな混乱は回避できる…
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週刊エコノミスト
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