米ドルに底堅さ 145円まで戻す展開も 内田稔
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相対的なドルの優位性は薄れつつあり、ドル高が一巡した可能性は高い。一方で金融政策次第では、2023年に再びドル高・円安に向かう可能性もある。
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2022年を振り返ると、3月以降、ほぼ一本調子のドル高・円安が進み、10月には1ドル=152円目前に迫った。この動きを読み解き、23年を展望するには、ドルと円とに分けて着目する必要がある。その点、ドルと円それぞれの実質実効為替レート(国内外の物価の格差を考慮した実質的な通貨の価値)をみると、プラザ合意(1985年)以来の高値に達したドルとは対照的に、円は変動相場制移行後の安値を更新したことが分かる(図1)。
「強いドル」と「弱い円」という対照的な構図が、ドル・円相場の急騰(ドル高・円安)を招いた。ドル高の原動力は金融引き締めだが、ほかに資源価格の高騰が交易条件の改善による「資源国通貨」ドルの上昇を支えた。さらに、米当局のドル高容認姿勢もドルの買い安心感につながった。
一方、足元では米国の景気後退入りへの懸念から、利上げ打ち止めや23年終盤の利下げも意識されている。資源価格の騰勢も和らぎ、相対的なドルの優位性は薄れた。22年11月にはイエレン財務長官も新興国への影響を念頭に、ドル高への懸念を表明した。これらを踏まえると、ドル高は一巡した可能性が高く、これまでの反動から上値の重い時期に移行したとみられる。
もっとも、米国の労働市場の需給は依然として引き締まったままだ。エネルギー価格や財から始まったインフレは、賃金インフレを経て、幅広いサービス価格を巻き込んだ粘着質なインフレに波及した。実際に米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げに転じるかは予断を許さない。相対的な高金利が保たれることも踏まえると、ドルは底堅さも維持するとみられ、ドル安が定着する可能性は低い。
日銀の緩和見直しは
次に、円安の一因であ…
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週刊エコノミスト
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