経済・企業

“純粋すぎる”マスク氏 ツイッター再建の次は? 鳥嶋真也

一挙手一投足が大注目(テキサス州ボカチカのスペースX開発基地に現れたイーロン・マスク氏)=2022年8月 Bloomberg
一挙手一投足が大注目(テキサス州ボカチカのスペースX開発基地に現れたイーロン・マスク氏)=2022年8月 Bloomberg

 宇宙開発のスペースXでは100人乗りの巨大宇宙船開発が佳境で、テスラはEVトラックも納車する。多忙を極めるとはこのことだ。

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 米起業家イーロン・マスク氏による米ツイッターの買収劇が幕を開けたのは、2022年4月のことだった。もともと彼はツイッターに対して一家言を持っており、特にトランプ前米大統領の凍結に代表されるようなアカウントやツイート内容の規制、その判断基準を批判しており、突然降って湧いた話ではない。

 もっとも、買収を表明したものの、条件などでツイッター側との折り合いがつかず延期を繰り返し、一時は買収中止をにおわせ、ツイッターから買収合意履行を求めて提訴もされた。そして紆余(うよ)曲折を経て、最終的に10月27日に買収を完了した。

 そこからの動きは素早く、まず世界各国の従業員の約半数を解雇し、人件費を削ることで赤字の削減を図った。また、リモートワークを禁止したり、自身のやり方についてこられる社員とともに社内に寝泊まりして作業を行ったりと、大ナタを振るった。さらに、ユーザーに対してはサービスの有料化などをほのめかしたり、トランプ氏のアカウント復活を認めるべきかどうかを自身のツイッターで投票を行い、その結果、凍結を解除したりと、物議を醸す言動を繰り返している。

 こうした言動や、大量解雇によってサービスの安定的な維持が難しくなるのではとの懸念などから、一時は「ツイッター終了」という言葉がトレンドに上るほどの騒ぎとなった。

読みふけったSF小説

 ツイッターを買収したマスク氏の狙いは、「言論の自由」の貫徹にある。彼はたびたび、ツイッターが公平、中立なサービスを提供していないと批判してきた。買収の直後には、話題のキーワードやニュース記事を表示するトレンド機能を、従業員が恣意(しい)的に操作していたことが暴露され、マスク氏の指摘が正しかったとされた。

 トランプ氏のアカウント凍結解除もまた、決して彼がトランプ派だからではなく、ひとえに言論の自由の観点から、トランプ氏といえども発言は認められるべきであるという立場に立っている。なお、彼は政治的穏健派を自称している。ポリティカル・コレクトネス(政治的公正)やトランスジェンダーに関しても、その是非とは別に、「誰かがそれを嫌悪、あるいは否定する自由は守られるべき」という立場を取る。

 こうした考えは、多かれ少なかれSF(サイエンスフィクション)に影響されたものであろう。彼は子どものころからSF小説を読みふけっていた。SFの中で、いわゆる電脳空間(サイバースペース)を描いた作品では、玉石混交な情報…

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