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教養・歴史 書評

日本の思想家たちを独自発想で紹介する愉快な哲学書 今谷明

 本誌の身上相談欄(「小川仁志の哲学でスッキリ問題解決」)に毎号健筆を振るっておられる哲学者による興味深い啓蒙(けいもう)書が出版された。小川仁志著『日本の思想家入門 「揺れる世界」を哲学するための羅針盤』(角川新書、1034円)である。著者は現代日本を“漂流する船”にたとえ、なんとか見通しを明らかにしようと、古代以来の日本の思想を代表する古典について、思想家ごとにわかりやすく展開し、その変化をたどっていく。その意味では本書は代表的な“警世”の書であり、また憂国の書でもあるといえよう。

 本書で取り上げられた思想家群を時代順に示すと、古代では空海、中世では親鸞・道元・兼好・世阿弥とさすがに仏教の高僧が多く含まれるが、近世になると、荻生徂徠や本居宣長等の儒国学者以外に、武士道を唱えた山本常朝や二宮尊徳、安藤昌益らと多彩になってくる。

 著者のユニークな点は、これらの群像を「不安・不条理の克服」「環境とSDGsの先駆」など独特のテーマごとにまとめて論じていることだ。大学院や研究室で純粋培養された研究者と著者の違いは、著者が総合商社や地方自治体など実社会に身を置いた経歴があり、発想の特異さが本書の構成に表れていることで、実に印象的である。

 例えば近世の農村改革で知られる二宮尊徳を「環境とSDGs」の思想家として捉…

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週刊エコノミスト

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