教育から医療まで超便利なインド版「マイナンバー」 柏村祐
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インド版「マイナンバー」の普及と「国家政府サービスポータル」の充実で、行政サービスのオンライン化が進んでいる。
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デジタル化が進むインドでは、行政サービスにおいてもオンライン化が進んでいる。その要因としては、網羅的に幅広い分野をカバーする行政サービスメニューの充実と、オンラインで行政手続きを行う上で必要不可欠となる本人識別番号(アドハー)の仕組みが国民に浸透していることが挙げられる。
インドにおいては、州、地区、地方レベルの多くの政府機関が、市民の生活をよりシンプルにし、透明性と効率性を高めた行政サービスを提供している。それぞれの政府機関が提供する行政サービスは、個別にウェブサイトを通じて国民に提供されている。行政サービスサイトである「国家政府サービスポータル」の目的は、一つのプラットフォームに政府機関が提供するオンラインサービスを集約し、提供する行政サービスの分類をわかりやすく表示することにある。これにより国民は自分が受けたい行政サービスをすばやく検索し利用できる。
行政サービスをポータル化する国家政府サービスポータルには、2022年12月上旬時点で、政府機関による1万3349件の行政サービス数が提供されている。実際に筆者も国家政府サービスポータルを操作し内容を確認してみたが、カバーする行政サービスの範囲の広さが印象に残った。
オンラインで完結
サービスは、「教育と学習」「健康とウェルネス」「電気、水道、地域サービス」「お金と税金」「ジョブ」「正義、法、苦情」「旅行と観光」「ビジネスと自営業」「出生、死亡、結婚、育児」「年金と福利厚生」「輸送とインフラ」「市民権、ビザ、パスポート」「農業、農村、環境」「科学、IT、コミュニケーション」「青少年・スポーツ・文化」の15種類に大分類される。大分類には中分類が設定され、行政サービスがわかりやすく分類されている(表)。
行政サービスの手続きもオンライン化が進んでいる。各分野で利用されているメニューの中から人気のあるサービス事例として、医療オンラインサービス、免許証オンラインサービスについて、どのような使われ方をしているのかを確認してみた。
医療オンラインサービスの一つである「健康とウェルネス」のカテゴリーにある「政府系病院のオンライン予約」というサービスでは、アドハーにひもづく携帯電話番号を利用することにより政府系病院のオンライン予約が可能となっている。診療を受けたい病院を選択し、対面診療かオンライン診療かを選択し、さらに診療したい部門を選択の上、予約日を入力すれば、確認のメッセージが携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)で受け取れ、予約が完了するという仕組みだ。また、オンライン予約のみならず自分の健康情報を病院と共有したり、検査結果をオンライン上で確認できるサービスが政府…
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週刊エコノミスト
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