スナク首相だけでない 在英インド社会の存在感 酒井元実
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インド系初の英首相となったスナク氏。英国には同氏のような優秀な人材を生み出すインド人社会が息づいている。
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2022年10月、スナク元財務相が英首相に就任した。アジア系にルーツを持つ人物が首相になったのは英国では初めてだ。
インド系の両親の元に生まれたスナク氏だが、インドは、かつて大英帝国の植民地だった地域の一つだ。英国が10年に1度実施する人口センサス(国勢調査)2021の結果によると、イングランドとウェールズに住むインド系住民は92万人強と人口全体の1.5%。この数は、移民系の人口シェアとしては最大だ。
インドは1947年に英国から独立したが、英連邦(コモンウェルス)の一員として残ったインドでは英国流の高等教育のシステムが維持され、優秀な人材は英国で就職、移民の道が開かれ続けた。一方、英国ではスナク氏のように優秀なインド系人材を生み出すコミュニティーが綿々と息づいている。
スナク氏の両親は東アフリカから英国に移住したとされる。英国が植民地を世界のあちこちに持っていた頃、行政に携わる現場の役人、そして貿易や商いごとは英国人が自ら働くのではなく、主にインド系の人々が担っていた。
スナク氏の祖父母夫婦はケニアに移住、そこで同氏の父親が生まれた。母親もパキスタンからケニアへ移住した経緯がある。英国人とインド系の人々の間には世界各地での植民地経営時代から培われた固い絆がある。
スナク氏のもうひとつの横顔として語られる話として、「夫人が大富豪の娘」というトピックがある。
アクシャタ・マーシー夫人の父親は、インドの代表的なIT企業インフォシス(Infosys)の創業者、ナラヤナ・マーシー氏だ。ナラヤナ氏は推定45億米ドルの資産を持つとされ、その1%弱をアクシャタ氏が譲り受けた。スナク氏の資産と合わせると夫妻の財産は8億ドル強と推定され、これは5億ドル前後と推定されている国王チャールズ3世の個人財産を上回る。
富裕層は英国で事業
インド系の人々が英国でビジネスを起こし、大きく成長させているケースは珍しくない。最も顕著な例は、故エリザベス女王夫妻もプ…
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週刊エコノミスト
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