法務・税務 FOCUS
税制改正で無申告のペナルティーをさらに強化 大橋誠一
自民・公明両党は2022年末、23年度与党税制改正大綱を決定した。少額投資非課税制度(NISA)の拡充、相続税の生前贈与加算制度の見直しなどが盛り込まれる一方、納税環境整備の一環として、加算税制度の見直しと電子帳簿等保存制度の見直しが措置されることになった。適時かつ適正な情報提供及び申告納税を行わない納税者に対してペナルティーをきめ細かく設け、より厳しい態度で臨もうとしている。
特に無申告については、税額300万円超は10%加重、3年連続無申告の3年目はさらに10%加重されることが明記された(表)。いずれも24年1月1日以後の期限到来分より適用される予定だ。無申告ではこれまで、積極的な仮装隠蔽(いんぺい)行為がなければ高率な重加算税を課せないというジレンマがあったが、昨今の一連の加算税に関する制度改正によってこのジレンマを克服し、制度的に重加算税により近い類型に位置付けようとしていると考えられる。
加算税には、過去の申告税額が増えた場合の過少申告加算税(本税に対して10%または15%)、申告期限後に初めて申告する場合の無申告加算税(15%または20%)、源泉徴収に係る不納付加算税(10%)及び仮装隠蔽に係る重加算税(35%または40%)がある。
従来は早期かつ自主的な申告を促すためのインセンティブとして、特例が多く設けられてきた。例えば、税務調査の着手後も、税額を増加させる更正処分(または新たに税額を発生させる決定処分)が課されることが予知される前までに修正申告(または期限後申告)をすれば、過少申告加算税(または無申告加算税)は課されなかった。
優良帳簿は5%軽減
しかし、現在は税務調査の通知を受けると、たとえ処分の予知前であっても過少申告加算税は5%または10%、無申告加算税は10%または15%が課される。また、過去5年以内に無申告加算税または重加算税が課されたことがある場合には、無申告加算税及び重加算税について通常の税率にそれぞれ10%が加重されるなど、適正に申告納税を行わない納税者へのペナルティーは厳しさを増している。
帳簿についても見直しが進んでいる。今回の税制改正大綱では電子帳簿等保存制度について、訂正・削除履歴の確認ができるなど一定の要件を満たした「優良電子帳簿」については、領収書などのスキャナー保存の要件の一部緩和及び電子取引データ保存の新たな猶予措置が盛り込まれた。優良な電子帳簿にかかわる申告漏れについては、過少申告加算税が5%軽減されるというインセンティブが設けられる。
しかし、電子帳簿保存については、対応のための人的・資金的資源が必要になるなど事業者にかかる負担は小さくない。加えて、スキャナー保存にかかわる電磁的記録に仮装隠蔽が認定された場合は重加算税が10%加重される措置がすでに存在するといったこともあってか、制度への対応については危機感を抱いている事業者は多い。
(大橋誠一・公認会計士、税理士)
週刊エコノミスト2023年1月24日号掲載
FOCUS 2023年度税制改正大綱 高額・繰り返しの無申告にペナルティーをさらに強化=大橋誠一