精細欠く習主席 迫られる地方財政健全化と対米修復 金子秀敏
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春節(旧正月)を控えた1月18日、中国のテレビニュースが習近平国家主席の映像を流した。全国各地の庶民とオンラインで対話する習氏の表情は精彩に欠け、昨年末に新型コロナウイルスに感染したとのうわさを裏付けるように見えた。
習氏は12月上旬、新型コロナの感染を封鎖と隔離で抑え込む「ゼロコロナ」政策を放棄した。大学生の間に「ゼロコロナ」に抗議する運動が広がったからともいわれるが、実際はPCR検査や大型隔離施設の建設など、莫大(ばくだい)な経費負担を迫られた地方政府が財政破綻を起こし、動けなくなったのだ。
黄信号の「夢」
習氏は1月20日の春節祝賀会で「今年は安定が第一」と演説した。新型コロナ禍で落ち込んだ経済の回復が最優先という意思表示だ。
その3日前、国家統計局が二つの統計を発表した。中国が歴史的転換点に入ったことを示している。
一つは2022年末時点の中国の総人口だ。14億1175万人で、21年末と比べ約85万人減少した。中国の人口が減少するのは1961年以来61年ぶりのことだ。
自然災害が原因だった61年は回復できたが、今回は高齢化や出生率低下によるもので、今後も人口減少は続く。もはや中国が世界の工場として成長した時代は終わり、2035年に中国が国内総生産(GDP)で米国を抜くという「習氏の夢」は消える。
もう一つの統計は、22年の実質GDP成長率だ。前年比3.0%で、政府目標の5%を大きく下回った。「35年までに20年対比でGDP倍増」という習氏のロードマップがある。実現には「5%前後」の成長率が必要とされ、3%では実現は難しい。
ロードマップは習氏の総書記3選を正当化する公約だった。実現できないなら党内で習氏に対する引退論が出ても不思議はない。
習氏は総書記3選後、政治局を…
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週刊エコノミスト
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