経済・企業株式市場が注目!海外企業

米モルガン・スタンレーを見舞う厳しい経営環境 小田切尚登

モルガン・スタンレーの米ニューヨークの本社(Bloomberg)
モルガン・スタンレーの米ニューヨークの本社(Bloomberg)

Morgan Stanley 米金融業に人員削減の波/67

 モルガン・スタンレーは世界の金融市場で名をはせる名門の金融持ち株会社であり、傘下企業が投資銀行や証券、資産運用など金融サービス事業を手掛ける。米国を代表する投資銀行としての実績が2007年の金融危機の時に大きな転機を迎えた。投資銀行が相次いで破綻あるいは吸収されてゆく中、同社も破綻を回避するためにいくつかの金融機関との提携を打診するもうまくいかなかった。そこで08年に同業のゴールドマン・サックス(GS)とともに米国連邦準備銀行の監督下の金融持ち株会社になることで存続が可能になった。さらにその1週間後にモルガン・スタンレーは三菱UFJフィナンシャル・グループからの90億ドル(約1兆1700億円)の出資を受け入れた。現在、同社は22.3%を保有する最大の株主となっている。

 金融危機以降、米国ではゼロ金利政策を背景に証券市場の好調が続いた。しかし金融危機への反省から米当局がリスク管理に関しての規制を大幅に強化したため、大手金融機関は高リスク取引や投機的な取引を縮小し、安定的だが利益率が低めのビジネスへのシフトを余儀なくされた。

 市場規制が厳しくなる中で、モルガン・スタンレーは自己変革を遂げてきた。その陣頭指揮を執ってきたのが10年からCEOを務めるジェームス・ゴーマン氏(64)である。コンサルティング会社マッキンゼーの出身で、伝統的投資銀行業務への思い入れがない。リスクを抑え、コストを抑えることを徹底した。債券部門の人員を削減し、ボーナスの支払いを厳しく切り詰めていった。

相次ぐ買収

 一方で、最大の貢献は資産運用部門を強化したことだ。12年にシティグループの資産運用・証券取次部門であったスミス・バーニーの買収を完了して、モルガン・スタンレーを世界最大級の富裕層向け資産運用会社に押し上げた。その後も、20年にオンライン証券仲介会社イートレードを130億ドル(約1兆6900億円)で買収し、21年には投資信託会社イートン・バンスを70億ドル(約9100億円)で買収し、運用資産が1兆2000億ドル(約156兆円)となった。

 資…

残り1377文字(全文2277文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事