世界最大級のグリーン水素製造装置メーカー、ノルウェーのネル 児玉万里子
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Nel 水素ステーションも国内外で展開/66
2023年1月にスイスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)では、気候変動とエネルギー転換がテーマの柱のひとつだった。エネルギー転換ではスピーカーたちが「グリーン水素」に言及し注目を集めた。これは再生可能エネルギーによって作られる水素である。
ネルは、この「グリーン水素」を作る水電解装置のメーカーである。ノルウェーのオスロに本拠を置いている。装置の製造能力、製造台数や販売台数、売上高などで世界最大級を誇っている。
ネルの事業は1927年までさかのぼることができる。会社の組織変更や社名変更を重ねてきたが、この間、水電解装置3500基を80カ国以上に提供している。さらにもうひとつの事業、水素ステーション設備でも、03年に世界初の一般向けの水素ステーションをアイスランドで開設した実績を持つ。14年に社名をネルに改め、株式をオスロ証券取引所に上場した。水素専業会社としては初の株式上場であった。
水素はエネルギーとして利用しても二酸化炭素を排出しない。さらに水を電解して水素を作る電解法では、電解過程で再生可能エネルギーを用いる。化石燃料を使わないため、電解のプロセスで二酸化炭素を排出しない。したがって、電解法によって作られる水素は「グリーン水素」と呼ばれ、次世代エネルギーの本命とされる。
買収で事業拡大
ネルの水素製造装置はノルウェーと米国で製造され、欧米中心に販売されている。大型装置はノルウェー国内の自動化された新鋭工場でアルカリ水電解法によって製造される。もうひとつの水電解方式は固体高分子(PEM)型水電解法だが、ネルは17年2月に同方式を用いる米国のプロトン・オンサイトを買収した。その結果、両方式の製品の提供が可能になり、水電解装置メーカーとして世界最大規模に到達した。
水素ステーション事業では、15年にデンマークのH2ロジックを買収している。同社は米国中心に販売している燃料電池車向け水素ステーションの会社で、03年の設立以来、14カ国の120カ所以上でソリューションを提供した実績がある。
ネルの売上高は急増している…
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週刊エコノミスト
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