30歳の新鋭監督が日本の停滞を象徴するWinny事件を重量感ある法廷劇に 寺脇研
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映画 Winny
Winnyって何? と戸惑うのはわたしのような高齢の情報弱者なのだろう。本誌読者の皆さんにおかれては先刻承知の、この画期的なファイル共有ソフトをめぐる事件が、映画になったのである。
開発者が著作権法違反幇助(ほうじょ)容疑で逮捕され、7年半にわたる裁判となるわけだが、事件の方にもわたしは無知だった。Winnyの卓越した性能を使えば、ネット上にある映像、音楽、ゲームなどのデータが容易に入手でき、社会的問題となっていたのだという。
たしかにそれはまずい。著作権侵害は文化芸術に大打撃を与える犯罪である。ただ、その行為に使われたソフトを開発した者まで罪に問われるのはおかしいと、いささかでも法理を知っていれば誰だってわかる。
では何故逮捕までされる羽目に陥ったのか。映画は、法廷での闘いを追って、その真相に迫っていく。浮かび上がってくるのは、警察権力の側の思惑だ。しかし、弁護団の懸命な弁論にもかかわらず、パソコンなどいじった経験さえなさそうなベテラン裁判官は検察側の主張に流されていった。実際の結果そのままに、判決は有罪となる。
事実に即したストーリーなので、もちろん最高裁で無罪を勝ち取った逆転劇も描かれるものの、エピローグとして軽く示されるだけだ。そう、ここが大切なのだが、作者たちは勝利と認識していないのである。最高裁まで7年半もの間、天才プログラマー金子勇がプログラミング行…
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週刊エコノミスト
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