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教養・歴史 アートな時間

栄光と悲劇の若き天才 エロティックで内省的な身体 石川健次

エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》 1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna
エゴン・シーレ《ほおずきの実のある自画像》 1912年 レオポルド美術館蔵 Leopold Museum, Vienna

美術 レオポルド美術館 エゴン・シーレ展

 19世紀末前後にウィーンのアートシーンをけん引したグスタフ・クリムトが死去した1918年、まるで後を継ぐようにエゴン・シーレは「オーストリアを代表する芸術家と目される」(本展図録)ようになった。同年3月に開かれた展覧会に油彩画19点とドローイング、水彩画29点を出品して「芸術家としても、また経済的にも大きな成功」(同)を収め、新しいアトリエも手に入れた。

 私生活では妻が妊娠し、「未来に向けて様々な計画」(同)を構想するなど絶頂期を迎えた矢先、当時流行したスペイン風邪に妻が感染して亡くなった。看病にあたったシーレもこの病に侵され、妻の死から3日後に28歳という若さで世を去った。

 栄光と悲劇に彩られた生涯は、シーレ(1890〜1918年)への関心をいっそうかき立てているだろう。だがエロティシズム、官能性にあふれ、タブーをいとわない主題、表現で賛辞と批判の間を揺れ動いた作品こそ真価なのは言うまでもない。「220点以上に及ぶ世界で最も包括的なエゴン・シーレのコレクション」(同)を誇るウィーンのレオポルド美術館の所蔵品を核にシーレの魅力に迫る。

 1907年、17歳のころにシーレはクリムトと出会う。金箔(きんぱく)を多用する“黄金様式”で知られ、28歳年上のクリムトはたちまちその才能を認めたという。シーレはクリムトの影響を受け、仲間から“銀色のクリムト…

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