図らずも主演女優の遺作に シニカルな笑いに満ちた逆転劇 野島孝一
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映画 逆転のトライアングル
「フレンチアルプスで起きたこと」などを手がけたスウェーデン出身のリューベン・オストルンド監督の傑作で、第75回カンヌ国際映画祭(2022年)で最高賞のパルムドールを受賞した。
オストルンド監督は「ザ・スクエア 思いやりの聖域」(17年)に続き2作連続のパルムドール受賞となった。美術館のキュレーターが四角いゾーンの展示物を設置し、他人への思いやりを訴える「ザ・スクエア」。その考えさせられる内容に比べ、「逆転のトライアングル」は、強烈な笑いと文明批評をぶち込んだ、ずば抜けた才気に満ちた作品だ。出だしからは想像もできない奇抜な展開には、あっと驚くばかりだ。
最初は男性ファッションモデルのオーディション風景。この映画の一方の主人公で、男性モデルのカール(ハリス・ディキンソン)を観客に紹介する巧妙な手口で、これはいかなる映画なのか、と興味を持たせる。
次に、カールの恋人で、売れっ子美人モデル、そしてユーチューブのインフルエンサーでもあるヤヤ(チャールビ・ディーン)が出てくる。カールとヤヤは、レストランで食事をするのだが、支払いをどちらがするかで大もめになる。互いに相手に払わせようというハラだ。恋人の痴話げんかによって2人の関係や性格などを認識させる。
さて、画面はがらりと変わって豪華客船クルーザーの船上。人気のあるインフルエンサーでモデルのヤヤとさえないカールの美男…
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週刊エコノミスト
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