愛と葛藤を描いたモームの傑作 充実の俳優陣と緻密な新訳で 濱田元子
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舞台 俳優座劇場プロデュース公演「聖なる炎」
『人間の絆』や『月と六ペンス』といった小説で知られるイギリスの作家、サマセット・モーム(1874~1965年)。20世紀の初めにロンドンで戯曲の上演が大成功をおさめるなど名声を手にし、約30年間は劇作家としても旺盛に活動していた。
日本でも「夫が多すぎて」「報いられたもの」などが上演されてきた。その中で「聖火」のタイトルで知られてきた「The Sacred Flame」を「聖なる炎」として、俳優座劇場プロデュースにより気鋭の小田島創志の新訳、小笠原響の新演出で上演する。
同劇場プロデュースでも85年に上演されている。今回プロデューサーをつとめる宮澤一彦が2006年ごろに初めて台本を読んだ時から「いつか上演したいとずっと温めていた」と語る。
舞台はロンドン郊外、タブレット家の邸宅の居間。新型飛行機の試験飛行の事故で半身不随となった長男モーリス(田中孝宗)は、母タブレット夫人(小野洋子)、妻ステラ(大井川皐月)、ウェイランド看護師(あんどうさくら)、弟コリン(鹿野宗健)らに囲まれて暮らしていたが、突然、謎の死を遂げる。
3幕仕立てで、6月のある夜から、次の日の昼ごろまでという短い時間の流れの中で、登場人物の愛と葛藤が緻密なセリフで紡がれていく。ミステリーのような仕立てになっているのも面白い。
幼いころに両親と別れ、医師免許を得たものの作家を…
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週刊エコノミスト
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