三輪山に疫病退散を祈る 古代豪族の盛衰明らかに 今谷明
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古代人は、山岳や湖沼など自然の地形を神に見立て、その自然を「神社」として崇(あが)めてきた。したがって、その自然地形が社殿とされていたので、これを「神体山」と称している。
以上の次第で、日本の神社の原初形態は自然物であり、今日言うような意味での「社殿」というような建造物は元来なかったのである。この原像を反映しているのが大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市)で、同社は拝殿はあるが本殿はなく、本殿のあるべき場所は三輪山の山麓(さんろく)で、3基の鳥居が建てられているばかりなのである。
この三輪山西麓は古代史上、非常に重要な地域で、邪馬台国畿内説ではその中心地にあたり、纏向(まきむく)遺跡があり、また卑弥呼の墓にも擬せられている箸墓(はしはか)遺跡が位置し、その築造年代は西暦240〜260年と推定されている。
鈴木正信著『古代豪族 大神氏 ヤマト王権と三輪山祭祀』(ちくま新書、1034円)は右のような重要地域で古代豪族として生き延びた大神氏(おおみわうじ)について、神話時代にさかのぼって発生・活躍・拡大の過程をたどり、盛衰と古代国家の関係を明らかにした好著といえる。
著者によれば崇神(すじん…
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週刊エコノミスト
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