米連邦債務はデフォルト危機? それとも債務危機は幻想? 岩田太郎
有料記事
米連邦政府の債務が1月19日、法定上限の31兆4000億ドルに達し、米財務省は債務不履行(デフォルト)を回避するための特別措置を開始した。この措置が失効する6月には再びデフォルトが懸念される。財政規律に厳しい野党・共和党が米下院の主導権を握る中、論壇では債務上限の引き上げに関する論争が活発化している。
民主党バイデン政権のイエレン財務長官は1月26日のインタビューで、「米国をデフォルト危機から救う唯一の解決策は、米議会が連邦債務の法定上限を引き上げることだ」と主張した。
米ニュースサイト「セマフォー」は1月31日付の記事で、「議会共和党は米政府が債務不履行に陥っても、国債を保有する投資家、社会保障年金受給者、米軍給与、退役軍人恩給に対する債務を他の支払いに優先して果たすよう義務付ける法案を提出。だが、民主党はこうした支払い優先順位付けは一時しのぎの策に過ぎないと非難しており、政府が債務不履行の結果として歳出を18~25%も削減することで社会のお金の循環が阻害され、米経済が破滅的な状況に追い込まれると主張している」と解説した。
さらに、フィラデルフィア地区連銀のハーカー総裁も2月10日の会議で、「世界の主要国である米国が債務不履行に陥ったら取り返しがつかない。我々の競争相手国や敵国が歓声を上げるだろう」と述べた。
米ニュースサイト「アクシオス」の経済専門記者であるニール・アーウィン氏は2月1日付の分析で、「米連邦準備制度理事会(FRB)は現在金融引き締めで米国債市場から流動性を引き揚げているが、米国が債務不履行に陥った場合は引き締めを即座に停止するだけでなく、米国債の買い入れを再開するか否かの決断を迫られるだろう」と予想した。
成長力を伸ばす財政支出を
カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授は2月9日付の評論サイト「プロジェクト・シンジケート」への寄稿で、「連邦債務…
残り587文字(全文1387文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める