中国がIPO登録制へ全面移行 加速する資本市場化 酒井昭治
有料記事
中国証券監督管理委員会は2月17日、証券取引所への新規株式公開(IPO)時の制度について、変更を発表した。従来の証券監督当局の審査・承認を経る「認可制」から、各証券取引所が上場可否を判断する「登録制」へ、全面的に移行する。行政による新株の発行数や価格への制限が不要となるなど市場化が進み、日本や米国などと同じ仕組みとなるため、中国内では資本市場改革の重要な一歩として大々的に報じられた。
従来の「認可制」では、審査プロセスが不透明だったり、承認まで長い時間を要したりしていた。当局の都合でIPOが長期間停止され、2013年は通年で2件にとどまる事態も発生した。
そこで19年、上海証券取引所内に新設された新興企業向け市場「科創板」で「登録制」の試験運営を開始。20年には深圳証券取引所内のベンチャー企業向け市場「創業板」で、21年11月に開業した北京証券取引所でも導入された。約4年にわたる試験運営を経て、今回の全面導入に至った。
「登録制」を先行実施した市場は、規模が順調に拡大している。科創板への新規上場社数は、19年の70社を皮切りに、翌年以降145社、162社、123社と、昨年こそ新型コロナウイルス感染症のまん延による一部手続きの遅延や、他市場の台頭などを背景に前年を下回るも、一定の存在感を維持する。昨年の中国本土全市場のIPOに占める割合は、社数ベースでは29%を記録。募集金額ベースでは43%に達し、上海や深圳のメインボードを大きく超えた。
このほか22年の科創板、創業板、北京取引所の新興3市場の合計では、社数は全体の83%(354社)、募集金額は76%(4482億元、約8.8兆円)を占めるに至った。新興企業の相次ぐ上場が株式市場の拡大に寄与している。
「登録制」での新規上場を通じ、ハイテク産業など国家戦略に沿った産業への資金支援にも成功した。新興3市場のセクター別IPO資金調達…
残り588文字(全文1388文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める