FRBが懸念する“ソフト”でも“ハード”でもない“ノーランディング”の怖さとは 渡辺浩志
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米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率を「財」「家賃」「非住居サービス」の三つのパートに分けて評価している。パウエル議長は、財インフレはすでに沈静化へ向かい、家賃インフレは年後半に急落すると認識しつつ、非住居サービスのインフレが長引くことを警戒する。
背景には、人手不足と賃金上昇がある。大手ハイテク企業で万人単位の人員削減が相次ぐ昨今だが、労働市場には今なお1100万人もの求人がある。リストラされた人々もすぐに他企業に再就職できる状況であり、米国の失業率はむしろ低下し、賃金上昇率は高止まりしている。
そのためFRBは政策金利を5%超へと引き上げる方針を堅持し、年内に利下げに転じる可能性を否定している。
政策金利はすでに4.6%となり、米国の名目潜在成長率(4%)を超えている。政策金利を投資コスト、名目潜在成長率を投資リターンと考えれば、実物資産への投資は逆ざやだ。住宅投資はもとより、設備投資の腰折れも近い。
銀行は貸し倒れを警戒し、貸し出し態度を厳格化している。
家計や企業の資金繰りが厳しさを増すなか、実物資産投資の悪化で米国は年後半にも景気後退(マイナス成長)に陥る公算が大きい(図1)。
消費者マインドが急回復
だが、この先も人手不足が続き、失業率が大きく悪化しないなら、景気後退となったとしても、痛みは小さく、実感の薄いもので済む可能性がある。そんな中で注目は、消費者マインド…
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週刊エコノミスト
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