インドネシアがEV産業の育成支援 再エネ普及にも注力 増川智咲
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蓄電池に欠かせないニッケル産出国のインドネシア。人口は3億人近い規模で消費地としても魅力的だ。
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東南アジア諸国連合(ASEAN)、中でもインドネシアの電気自動車(EV)産業への注目度が高まっている。背景にあるのは、世界規模の「脱炭素化」へ向けた動きだ。ガソリン車の普及が加速するASEANでは、排出される二酸化炭素(CO₂)の約35%が自動車などの「運輸」セクターに由来する。ガソリン車からEVへの移行と、電力生産の再生可能エネルギー化は、「脱炭素」を果たす上で重要な課題だ。インドネシアはタイに比べ自動車産業が育っていないが、3億人近い人口規模、さらにEVのバッテリーに使われるニッケルが産出される点で、消費地そして生産地として魅力的な投資先となりつつある。
インドネシア経済は従来、資源依存度が高く、輸出の約45%を石炭や原油のような鉱物資源と、パームオイルやベースメタルなどの資源加工品が占める。景気が資源価格に左右されやすい上、加工度の低い資源の輸出で国内製造業が育たない問題も抱えてきた。
そんな中、ニッケル資源を利用したEV産業の育成はまさに、出遅れた産業蓄積のチャンスなのだ。政府は、海外からのEV関連投資に係る税の優遇策や、販売価格を引き下げる政策を通し、EV産業の育成を支援。国内生産台数で、2022年の2.4万台から25年に40万台、30年には60万台へ増やす計画だ(図)。
しかし、EVの普及による脱炭素実現には、乗り越えるべき障害・課題もある。まず、燃料となる電気の脱炭素化だ。インドネシアの発電源に占める石炭の割合は60%と高い。このままでは燃料がガソリンから石炭に代わるだけだ。もう一つはEVがガソリン車よりも高価な点だ。インドネシアは1人当たりの国民総所得(GNI)が約4180ドル(21年、世界銀行)で、世銀の区分に基づくと、…
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週刊エコノミスト
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