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週刊エコノミスト Online 学者が斬る・視点争点

DR(需要応答)で電力不足を克服する 杜依濛

 電力不足に対応するために、デマンドレスポンス(需要応答)の活用が注目されている。

IoT活用の需要制御が普及のカギ

 2011年の東日本大震災以降、原子力発電所が稼働停止し、電力不足が懸念されたため、毎年の夏季や冬季の電力需要ピーク期には、政府が全国の家庭や企業に対する節電の要請を行ってきた。ここでの「節電」という言葉は、ピーク時の電力が不足するのに対応して電力使用を抑制することを意味している。13年度までは、具体的な節電目標が設けられていたが、14年夏季からは、節電要請の内容は数値目標は設けないものに変更された。例えば、14年夏季の節電要請期間は、7月1日から9月30日までの平日9時~20時となり、特に需要ピークの13時~16時という時間帯においては、家庭や企業に対して無理のない範囲で、できる限りの節電を要請した。その結果、14年夏季の節電による効果は全国で約95億キロワット時で、12年夏季の91億キロワット時と同程度だった。さらに、太陽光発電の普及や原子力発電所の再稼働で供給が増えたことが要因で、16年からは節電の要請が一時的に見送られたが、22年夏季と冬季に、7年ぶりの全国に対する節電要請が再開された。

「お願い」ベースの限界

 これらの節電要請は、いずれも夏季と冬季の電力需要ピーク期に行われる「計画的な節電要請」だった。しかし、22年3月22日に、電力需要の非ピーク時期の「緊急の節電要請」が行われた。3月16日の福島県沖地震による火力発電所の計画外停止、地域間連系線の運用容量の低下、そして寒波による需要の大幅な増大などの事態が重なり、その結果、電力の需要が供給能力を超えてしまいそうになった。厳しい電力需給の状況を踏まえ、東京・東北エリアを対象に、「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」が発令された。緊急的な措置だったが、家庭部門と産業部門の節電協力を得られたことで、22日に東京エリアで約4400万キロワット時と節電でき、需給逼迫は1日で解消された。特に電力需要ピークの17時台は約350万キロワット時も節電し、大規模停電を回避する大きな力となった。

 今まで行われてきた節電要請は、数値目標の有無にかかわらず、家庭や企業に呼びかけるもので罰則はないため、「お願い」ベースの節電だといわれている。「お願い」ベースの節電要請を行うことで、本当に節電の目標を達成できるのかについて検証するため、京都大学の研究チームは12年夏季と13年冬季に、京都府けいはんな学研都市で節電のフィールド実験を行った。研究の結果によれば、節電要請を行う場合、最初の数日間に節電効果があったが、その効果はすぐになくなるとわかった。つまり、今までは「お願い」ベースの節電要請で節電目標を達成し、大規模の停電を避けてきたが、その効果が長続きしないリスクがあり、不確実性が高いという問題点がある。これからの電力需給逼迫時への備えとして、特に需要側で実施するデマンドレスポンス(DR)の活用が必要とされる。

 DRは日本語で「需要応答」といい、つまり、消費者側が供給状況に応じて電力使用量を変化させる仕組みだ。DRは、…

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