アフリカで拡大する食料・債務危機 中国「一帯一路」が加速 吉田敦
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アフリカではコロナ禍、ウクライナ戦争で危機的状況に直面する国々が少なくない。中国の急速な進出が債務の増加につながっている。
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21世紀に入ってからのサハラ以南アフリカ(以下、アフリカ)は、「希望に満ちた大陸」に変貌を遂げたといわれてきた。25歳以下の若年層が全体の6割を占める約12億人の人口と、都市中間層を中心とした旺盛な消費市場の拡大など、堅調な経済成長を続けるアフリカのポジティブな側面が指摘されてきた。
実際、アフリカは2000年以降の10年間で平均5.5%の比較的高い経済成長率を記録し、10年から19年にかけても3.9%の成長率を維持していた。20年序盤から始まった新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響で、世界の経済成長率がマイナス3.1%に落ち込むなか、アフリカ経済の成長率はマイナス1.6%(20年)にとどまった。
21年の成長率は、前年の落ち込み幅を大きく取り戻す4.7%を記録。さらに国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」(22年10月)では、アフリカは24年以降も4%台を維持すると予測されている。
しかし、アフリカ経済の実態をみると、持続的な経済成長の軌道に乗ったという見方は再考せざるを得ない。
貧困と食料危機は拡大
それどころか、コロナ感染拡大やウクライナ戦争以降、危機が拡大しているアフリカの国々も少なくない。国連アフリカ経済委員会の報告によると、コロナ感染拡大による世界景気の低迷で、アフリカでは22年だけで新たに5800万人が職を失い、極度の貧困層に転落した。30年にはアフリカ全体で極度の貧困層が5億人近くまで増加する可能性が高い。アフリカはSDGs(持続可能な開発目標)の第1目標である貧困の削減が進展していない唯一の地域であり続けている。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻以降、食料や肥料、燃料の価格高騰により、アフリカ各地で深刻な食料危機が発生している。
22年末時点で深刻な食料不足に直面している人数は、アフリカ全体で1億2300万人を超えており、世界全体の3分の2がアフリカに集中している。その原因は、輸入食料や肥料の価格高騰だけでなく、世界的な気候変動の影響で、サイクロン(台風)が頻繁に発生するようになったことや、経験したことのない長期の干ばつが発生していることが、アフリカで食料危機を招いている要因だ。
例えば、アフリカ南部のマダガスカルでは、20年から現在まで干ばつが数年も続いており、この影響で同国南部を中心に114万人もの人々が飢餓に直面している。首都から離れた貧しい農村地帯で干ばつが発生し、農作物の収穫量が激減。そのため自給自足で暮らしていた農民たちは、ほとんど食料を手に入れられなくなってしまった。
また、アフリカの対外債務残高は09年以降、増加を続けており、コロナ禍以降、その勢いが増している。23年にはアフリカ全体で8000億ドルを超える見通しで、「債務返済に支障を来している状態」に達した国も8カ国存在する。西アフリカのガーナは、債務残高が10年の83億ドルから21年は360億ド…
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週刊エコノミスト
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