“新超大国”インド スマホと半導体製造に注力 石油対外依存がアキレスけん 椎野幸平
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インドは世界1位の人口による「内需」が成長の原動力だ。スマホや半導体の国産化を進めるが、エネルギー高に対する脆弱性もある。
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インドは遅くとも今年中に人口が中国を上回り、世界最大の人口大国となると見込まれ、成長性が改めて着目されている。経済面のみならず、外交面でも主要20カ国・地域(G20)の議長国として、さらには新興国・途上国「グローバルサウス」を代表する国として、存在感を発揮しつつある。
大前提として、人口規模とその構成をみると、国連による2022年の推計によれば、インドの23年7月の人口は14億2863万人に達し、中国を上回ることが見込まれ、世界最大の人口大国となる(22年末に既に上回ったとの推測もある)。総人口に占める生産年齢(15〜65歳)人口比率が高まっており、人口構成面から経済成長が押し上げられやすい局面を迎えている。この比率は32年まで一貫して上昇していくことが予測されている。
中期的にもインド経済は堅調な成長率が見込まれており、世界経済での存在感が一段と上昇するだろう。国際通貨基金(IMF)に基づけば、インド経済が世界経済に占める比率は22年の3.4%から27年には4.1%に上昇。国内総生産(GDP)は25年にはドイツを、27年には日本を上回り、米中に次ぐ世界3位の規模となると予想される(表)。これまでは長期にわたり、ほぼ一貫して中国を下回る成長率で、その差は拡大してきたが、縮小局面に入ることも想定される。
国内携帯市場が拡大
そして、何より今後の期待を集めるのが、製造業で新たな産業集積の芽が生まれていることだ。
インドが工科系の高等教育基盤を背景に、ソフトウエアやデジタル分野で世界的に競争力を有していることは広く知られている。インドは今後も、工科系人材の供給国として重要な役割を担っていくことは疑いない。
一方、製造業においては、モディ政権が「メーク・イン・インディア(Make in India)」を掲げながらも伸び悩んできた。自動車や鉄鋼、石油化学の素材産業などで一定の産業基盤を有するが、これまでエレクトロニクス分野の産業集積は極めて限定的だった。
しかし近年、この分野で新たな産業集積の芽が生まれ始めている。10年代後半以降、スマートフォンの現地生産、輸入代替が進んでいることである。
この背景には、国内の携帯電話市場の拡大とともに、国内生産促進を目的とした補助金スキームである「生産連動型インセンティブ(PLI)」をてことして用いていることがある。中国からの輸入に大きく依存していた携帯電話機器貿易は19年以降、貿易黒字に転換した。
そして今後、エレクトロニクス産業の集積がどこまで広がるかが注目される。特に、インド政府が注力する分野が半導体で、半導体の自国生産により、サプライチェーン強靭(きょうじん)化を図っていきたい考えだ。半導体需給の軟化が見込まれ、市況に不透明感が出る中、実際に誘致につながるかは不透明だが、スマートフォンの現地生産によって国内で最終需要がより創出されていることは、これまでとは異な…
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