中印“誘致合戦”に揺れる南アジア 内政混乱の引き金にも 深沢光樹
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南アジアは18億人の巨大人口を抱える。世界的な異常気象やインフレで経済にダメージを受ける中、中印の経済援助に揺れ動いている。
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南アジア諸国にはインド亜大陸に位置するインド、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ブータン、そしてインド洋島嶼(とうしょ)国のスリランカ、モルディブが含まれ、総計約18億人が暮らす。この地域はかつて英国に支配され、植民地時代の負の遺産は独立後も社会・経済に影を落とし、貧困問題はいまだに根深く残る。
新型コロナウイルスに加え、ウクライナ戦争による世界経済の混乱の中、南アジア諸国の政治経済は揺れ動いている。特にインド周辺国は、コロナ禍による経済の疲弊に追い打ちをかけるように、世界的な異常気象やウクライナ戦争を背景とした食料・資源価格の高騰、そして米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げを受け、国際収支と財政の逼迫(ひっぱく)、自国通貨安、インフレが生じ、人々の生活は圧迫されている。スリランカ政府は2022年4月、事実上のデフォルト(債務不履行)宣言をし、23年3月に国際通貨基金(IMF)は同国への融資を承認した。IMFはすでに同年1月にバングラデシュにも融資を承認し、パキスタンについても協議中だ。
対処を迫られる南アジア諸国だが、特にインド周辺国は昨今、インドと中国という二つの大国間で揺れ動いてきた。
インドは地域において経済や人口の規模で群を抜き、中心的な国として存在する。周辺国に対して政治的・経済的影響力を行使し、グローバルリーダーとしての存在も志向する。そのインドが経済的協力関係にありながら、安全保障の観点から対峙(たいじ)するのが中国だ。
南アジアにおいて、中国の掲げる「一帯一路」構想はインドとブータンを除いて承認され、同国の各種インフラ建設計画や経済援助、貿易と投資、融資は各国で高い存在感を確立した。一方インドは、中国への対抗策として周辺国との関係性強化を試みる。さらに「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の下、日本、米国、オーストラリアとの枠組み(クアッド)にも参加し、「民主主義諸国」と安全保障上の連携を行う。
これは、インドが世界での立ち位置向上へのステップになる上、枠組みによって西側諸国からの経済的協力を引き出すことも可能となる。事実上の中国包囲網とされてきたクアッドだが、ウクライナ戦争下の今、ロシア包囲を想定する動きも見られ、インドは引き続き南アジア地域での重要なパートナーとして日本や欧米諸国から認識されている。しかしインドは中露とも経済や軍事でつながり、独自の外交も展開しており、必ずしも「民主主義諸国」と足並みをそろえているわけではない。
「接近と修正」繰り返す
インド周辺国はこのような二つの大国に挟まれる中で政治経済関係の構築を求められてきた。インドとの政治的・経済的関係性のバランスを取るために中国に接近し、または中国への対応としてインドに接近もできる。加えて、FOIPやクアッドのような枠組みを背景とした経済協力などの機会も得られる可能性がある。日本の政府開発援…
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週刊エコノミスト
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