国際・政治

大国インドネシア まもなく「新G7」中核国に 石井正文

ジャカルタ初の地下鉄開通初日から、多くの乗客が利用した。日本はこれから、日本はこれからも必要とされる国でいられるか Bloomberg
ジャカルタ初の地下鉄開通初日から、多くの乗客が利用した。日本はこれから、日本はこれからも必要とされる国でいられるか Bloomberg

 2040年代にはGDPで世界4位に浮上する大国インドネシア。日本の国益のためにも同国との連携は必要だ。

>>特集「世界経済入門2023」はこちら

 国家戦略を考えるには、10~20年程度先の世界の潮流を見極め、「今から」何をすべきかを考えることが必要だ。すると、インドネシアがますます重要になるわけが見えてくる。

 インドネシアは、米国、中国、インドと同じ「大国」のDNAと潜在力を感じさせる国だ。2億7000万人以上の世界4位の人口。平均年齢32歳の若い国で、2040年以降も労働人口の多さが経済成長に有利に働く「人口ボーナス」が続く数少ない国だ。国内総生産(GDP)は世界17位だが、年率5%以上の成長を続けており、40年代には日本のGDPを抜き世界4位になると予想されている。これだけでも十分に今後が魅力的な国だが、それ以上に重要となる理由がある。

世界の多数派形成でカギ

 まず、40年代にはインドネシアがインドと共に世界の多数派形成の鍵になることだ。

 いまだに米国のGDPは中国の1.3倍、国防費は2.5倍だが、中国の追い上げは急で、30年代にはGDP、国防費共に米中は同レベルになると予想される。ただし、世界は米中が仕切る主要2カ国(G2)時代到来かと思うと、インドが出てくる。

 インドの人口は既に昨年に中国を超え、世界1位。中国の人口が減少し、高齢化も急速な一方、インドでは40年以降まで人口ボーナスが続く。30年代にはインドは日本のGDPを抜き、世界3位となる。30年代は、G3(米中印)という3超大国が、世界の大きなすう勢を決める時代になるのだ。

 では、その次に来る国はどこか。それはGDP世界4位、5位の日本とインドネシア。統一を維持していれば欧州連合(EU)。そして、ロシアとなろう。ウクライナ戦争後も、ロシアは扱いにくいが無視できない国として残る。もし世界的問題が発生すればこれら“新G7”で、日本、米国、EUが同一ポジションを取り、その反対の極に中露が来る。

 そして真ん中に残る国が、インドネシアとインドだ。これはウクライナ戦争で既に起こっている。両国は大国で、どの国とも同盟せず、国益に正直な意思決定ができる国だ。この両国がどちらの陣営に近い立場を取るかで世界の多数派が決まる。日本や米国は、この両国が少しでも日米に近い立ち位置を取るよう、平時からのあらゆる働きかけが必要なのだ。

 インドと共にインドネシアの国際的影響力は既に増している。昨年のG20で、予想に反し、議長国としてインドネシアが共同声明合意にこぎ着けたのは、米中露を含む主要国が同国の意向を無視できないと感じ始めたことを示す。

 一方、これが東西冷戦下でのいずれの陣営にも属さない「非同盟運動」のような中立グループ形成につながるかといえば、必ずしもそうともいえない。実際、中小各国は、常に国益に沿ってG3やインドネシアとの距離を微妙に調整している。インドが「グローバルサウス・サミット」を開催しても、この実態は変わらない。

 なお、「グローバルサウス」は便利なはやり言葉だが、分断的で過度な単純化だ。相手はグローバルサウスではなく、インドやインドネシアなど個別の国々で、各国へのアプローチは当然“テーラーメード”であるべきだ。日本が東南アジアで行ってきたこのようなアプローチこそ今後、大事になる。

 そしてインドネシアが属…

残り1632文字(全文3032文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事