成長力は突出のベトナム 環境悪化で持続可能性に課題 緒方亮介
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ベトナムは急成長中だが大気汚染、交通渋滞など課題が山積。日本がその解決に力を貸すチャンスだ。
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ベトナムは、“超人気国”だ。新型コロナウイルス禍もマイナス成長を経験せず、国際通貨基金(IMF)による経済成長予測は2023年が6.2%、24年は6.6%、今後5年平均も6%を超え、東南アジア諸国連合(ASEAN)でも突出する(図)。人口も間もなく1億人に達するなど魅力的条件がそろい、直接投資も右肩上がりだ。そのせいか筆者はハノイ在住だが、誰もが今日より明日が良くなると信じており、前向きで明るい気持ちをもらえる。
もちろん良い点ばかりではなく、直近の不動産市場の急落や改正消防法による建設着工の遅れ、昨今判明したコロナ禍での汚職による一連の政府幹部更迭のあおりを受け、今年と来年の成長率や直接投資は下振れする可能性もある。一方で、1党支配体制をとる共産党と国民の信頼関係は約束された経済成長の上で成り立ち、党が極端な中国重視の政策に偏らない限り、今後5年程度は内需を目的とした投資も堅調だろう。
日本とベトナムの関係も良好だ。両国は今年で外交関係樹立50周年を迎えるが、ベトナムに進出する企業の数は約2000社、在住日本人も2万人に上る。また、日本で働くベトナム人の数も40万人を超え、中国を抜いて世界最多となった。両国首脳は毎年のようにお互いを訪れ、旅行客も後を絶たない。日本がこれまでに緊密な関係を築けている国は、世界を見渡しても他にはないのではないか。
一方で国際社会は、この東南アジアの人気国に対しても「持続可能な」成長を求める。この観点で、ベトナムには潜在リスクが多く存在する。例えばハノイの大気汚染は世界最悪の水準で、ゴミ問題や交通渋滞も年々悪化、都市と地方の医療格差や少子高齢化といった課題も山積している。
この問題はベトナム共産党も認識しており…
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週刊エコノミスト
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