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バルセロナで見えたモバイル最前線 注目株はO-RAN基地局 石野純也

スペイン・バルセロナで開かれたMWC。世界中から参加があり最新技術をアピール 筆者撮影
スペイン・バルセロナで開かれたMWC。世界中から参加があり最新技術をアピール 筆者撮影

 モバイル業界では今、5Gに続く6Gの技術仕様を固める動きや、衛星とスマートフォンとの直接通信などが最新のトレンドになっている。

O-RANに商機を求める日本勢 楽天グループが先行

 スペインのバルセロナで2月27日~3月2日、モバイル関連の世界見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)」が開かれた。MWCには、NTTドコモのような通信事業者、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソンなどの通信機器ベンダー(供給業者)、さらに端末メーカーなど、幅広いモバイル関連企業が集う。

 各社はMWCの場で最新技術をアピールしたり、標準化の動向を議論したりする。モバイルに特化した展示会形式のイベントとしては、世界最大級の規模を誇る。今年のMWCで注目を集めたトピックの一つが「オープンRAN(O-RAN=Open Radio Access Network)」と呼ばれる技術。O-RANとは、携帯の基地局を構成するさまざまな装置の仕様を標準化し、オープンな組み合わせにしていくものだ。

 これまでの基地局は、ノキアならノキア1社の製品で統一して構成するのが一般的だったが、O-RANでは、複数のベンダーの組み合わせが可能になる。例えば、無線を発信するアンテナとその無線を制御する無線機は富士通、その先にあるデータを処理する機器には米インテルのチップを使い、ソフトウエアは米国のネットワークソフトウエア企業のマベニアが提供する──といった形だ。

 通信事業者側から見ると、自社に最適な機能を実現するための機器を部分ごとに選定できる。通信機器ベンダー1社に頼らなくてよくなるため、競争が働き、コストも抑えやすくなるのがメリットだ。一方で、これまで通信機器ベンダー頼みだった通信事業者は、自らが主導して機器を組み合わせ、運用するノウハウが乏しい。

 2022年にO-RANを外販する楽天シンフォニーを設立した楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は「単純に動けばいいわけではなく、いろいろな機能を付けなければならないうえに、パフォーマンスの問題もある。動いたけれど消費電力が3倍では意味がない」と語る。

「年間100億円目指す」

 だが、日本勢はO-RANに商機を見いだそうとしている。MWCに合わせ、ドコモは今年2月、O-RANを推進する「OREX」というブランドを立ち上げた。O-RAN仕様に基づいた機器やソフトウエアを開発するベンダーの連合で、ドコモはまとめ役を担う。O-RANを使いたい海外の通信事業者をコンサルティングしていくのがこのブランドの狙いだ。

 ドコモは、海外の通信事業者5社をさまざまな形で支援している。例えば、韓国の通信事業者KTとは、22年1月に基本合意を締結し、O-RANの検証を行っている。米国の衛星放送サービスのDISHワイヤレスとは、ドコモが用意したO-RANの動作検証「シェアドオープンラボ」を活用することで合意した。こうした取り組みを通じ、ドコモはO-RAN事業で「早期に年間100億円の売り上げを目指す」(井伊基之NTTドコモ社長)としている。

 ただ、この分野で先行しているのは、楽天モバイル傘下の楽天シンフォニーだ。同社はMWCの会場でイベントを開催。O-RANを使って基地局を仮想化したネットワークの優位性を紹介して、楽天モバイルでその性能を実証済みであることを強調した。

 楽天シンフォニーは、大型案件としてドイツの新興通信事業者1&1のネットワーク構築を支援しており、22年の売上高は640億円に達した。三木谷氏は「O-RANには未来がある。大きなテレコムカンパニーも一部は試してみたいという意向を示している」と言い、市場が拡大していることがうかがえる。

 ドコモや楽天は通信事業者の経験を生かしてネットワーク構築を支援する立場だが、日本の通信機器ベンダーもこの潮流に乗って、海外での存在感を示そうとしている。ノキアやエリクソンなど海外通信機器ベンダーのように、基地局設備のシェアが高くない分、O-RANには取り組みやすく、逆転を狙うチャンスがある。

6Gの技術仕様固めも

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