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国際・政治 エコノミストリポート

米共和党の大統領候補指名獲得レース 起訴でも支持集めるトランプ氏 今村卓

米フロリダ州の自宅で演説し、検察を非難したトランプ前大統領(4月4日)。根強い支持者に支えられ、共和党の指名獲得レースを独走している Bloomberg
米フロリダ州の自宅で演説し、検察を非難したトランプ前大統領(4月4日)。根強い支持者に支えられ、共和党の指名獲得レースを独走している Bloomberg

 バイデン氏とトランプ氏の再戦の可能性が高い2024年米大統領選。注目は共和党の指名獲得レースの結果だ。

80歳バイデン氏の対抗軸見えず

 2024年11月の米大統領選まで1年半余り。民主党は現職のバイデン大統領(80)が順当に再選に挑むとみられる一方、政権奪還を目指す共和党の指名獲得レースは、いち早く出馬を表明したトランプ前大統領(76)が3月末に大統領経験者として初めて起訴されるなど、波乱含みの展開になっている。

 共和党の指名獲得レースは、トランプ前大統領が独走している。共和党支持者に対する最近の複数の世論調査では、トランプ氏の支持率は50%前後に達し、2位のデサンティス・フロリダ州知事(44)に30ポイント近い差をつけている。

強固な岩盤支持層

 トランプ氏の強さの理由は岩盤支持層の存在だ。16年大統領選から共和党内で労働者階級とキリスト教福音派などで構成される強固な支持層を抱え続け、20年大統領選で敗れた後も、その支持は揺るがない。連邦議会でも主に下院でトランプ氏に忠誠を誓い、支持層も重なる系列の議員が増え、「MAGA(マガ=『米国を再び偉大に』を意味する略語)共和党」とも称される党内の一大勢力になっている。とはいえ岩盤支持層だけなら、トランプ氏の支持は3割程度にとどまるはずだ。党内のエスタブリッシュメント(既存の支配層)や穏健派の一定割合も、トランプ氏の前大統領としての知名度と前政権の減税や規制緩和、連邦最高裁で保守派の判事を過半数にした実績を評価して支持しているのだろう。

 もっともトランプ氏の支持は盤石ではない。世論調査をみても、支持率は昨年の中間選挙前は5割前後を保っていたが、選挙後は40%台前半まで低下していた。中間選挙でトランプ氏が推薦した極端な主張をする候補が上院選や州知事選で軒並み敗れ、共和党の伸び悩みにつながったため、批判が強まった。大統領選もトランプ氏以外の候補を求める声が広がり、フロリダ州のデサンティス知事の待望論も広がった。

 そのトランプ氏の支持が5割に回復したのは3月下旬からである。同氏がSNS(ネット交流サービス)で唐突に「逮捕される」と訴えて、現実にニューヨーク州大陪審に大統領経験者として初めて起訴され、裁判所で罪状認否に臨んだ時期と重なる。この捜査を指揮したブラッグ検事が民主党候補として選挙で当選していたため、トランプ氏は潔白を訴え、共和党と足並みをそろえて「起訴は魔女狩り、権力の乱用だ」と強調、党と支持者に結束を促した。起訴を逆手にとった戦術だったが、起訴直後にCNNが実施した世論調査(表1)では共和党支持者の79%が起訴の判断に反対と答えており十分な効果があったとみられる。

 問題は、今後もトランプ氏が5割に戻った支持を維持できるかである。起訴後の支持率の上昇の多くは一種の旗下集結効果(危機の際に指導者への支持が一時的に高まること)だ。しかし明らかになったニューヨーク州大陪審の起訴の罪状は34件に及んだとはいえ、元は不倫関係にあったと主張する女性への口止め料の支払いの隠匿(いんとく)である。トランプ氏のそのすべての否認も含めて、共和党支持者を含む大部分の有権者には、この8年近くも見せられてきたトランプ氏の政治ショーの延長と映り、トランプ氏なら驚くに値しないと受け止められただろう。

 トランプ氏の次回出廷は12月となる。それまで同氏は20年大統領選の不正を唱え、捜査は24年大統領選への介入だと訴え、再選後の新しい政策も展望も示さない可能性が高い。岩盤支持層は信奉し続けるだろうが、他の共和党支持者はさすがに飽きるだろう。旗下集結効果は次第に消え、支持率の上昇余地は消えていくのではないか。

 しかもトランプ氏には他に刑事捜査が進められている主要事件が三つある。20年大統領選のジョージア州での集計作業に介入した疑惑、21年1月の連邦議会襲撃事件を扇動した疑惑、機密文書を自宅に持ち出した疑惑である。ジョージア州の疑惑は検事が起訴するか近く判断するとの観測がある。この疑惑のうち一つでも起訴されれば、今は「魔女狩り」と非難し…

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