国際・政治

台湾は米中対立の“要石” 総統選に向け緊張はピークへ 市川真一

台湾の半導体産業は今やどの国・陣営でも先端技術に欠かせない Bloomberg
台湾の半導体産業は今やどの国・陣営でも先端技術に欠かせない Bloomberg

 中国の新型ミサイル開発で、地理的重要性が一層高まる台湾。総統選に向けた2024~27年は、緊張感が高まりそうだ。

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 昨年10月の中国共産党第20回党大会において、習近平中央委員会総書記(国家主席)は2027年秋まで国家を率いることになった。一方、台湾においては、蔡英文総統の任期が来年5月で終わるため、選挙を控える。この24~27年の4年間、インド太平洋地域は台湾を巡り、極めて緊張感の高い状態に置かれる可能性がある。

ミサイル兆候把握に欠かせず

 米国をはじめとした西側諸国にとり、台湾の重要性は安全保障と経済安全保障、二つの面から説明できる。安全保障の観点から、中国の脅威が飛躍的に高まる可能性があるのは、同国海軍が開発中の新型潜水艦発射大陸間弾道ミサイル(SLBM)「巨浪3号(JL-3)」の存在だ。現在、実戦配備されているJL-2の射程が7500キロなのに対し、JL-3は1万2000キロとみられる(表)。その場合、南シナ海、東シナ海、フィリピン海から発射すると、米国全土及び欧州全域が射程圏内だ。

 陸上から打ち上げる大陸間弾道ミサイル(ICBM)と異なり、SLBMは発射の兆候が極めて把握しにくい。対潜哨戒機が極めて重要になるが、中国が「第1列島線」として位置づける、フィリピンや南シナ海を結ぶ線の中心に位置するのが台湾だ(図)。仮に台湾が中国に統一された場合、中国海軍の潜水艦の動きがつかめなくなる可能性があり、中国と西側主要国の軍事バランスに影響が及ぶことも考えられる。

 経済安全保障に関しては、改めて説明するまでもなく、台湾が持つ最先端半導体の製造能力が極めて重要だ。人工知能(AI)、量子コンピューターからスマートフォン、自動運転車、ミサイルに至るまで、半導体技術なくして国際競争に勝つことはできない。

 米国のバイデン大統領は22年8月9日、「CHIPSおよび科学法」を成立させ、国内の半導体業界に対する補助金・奨励金として527億ドルの予算を確保した。製造専業のファウンドリー(受託生産)として50%以上の世界シェアを持つ台湾のTSMCを誘致、…

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