ロシア経済に制裁効果は見られず 変わらぬプーチン氏支持 雲和広
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ロシアはウクライナ戦争で経済制裁を受けても貿易黒字は大幅増加。厭戦気分も高まっていない。
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ウクライナ戦争は既に1年を超えるに至った。この間欧米を中心とする諸国による対ロシア制裁の広範な導入が、ロシア経済に対してどのような影響を与えているのかさまざまに語られてきた。ロシア、ウクライナともそうだが、戦争当事国の提供する情報を信頼し得るのかという問題もあり、その評価は難しい。ロシア政府が提供する戦況などの情報は信頼しない一方で、公開された経済指標は信頼するという姿勢自体、そもそも矛盾している。
多く語られている通り、制裁が短期的には効果を与えていないことは明らかであろう。ロシアは2014年のクリミア紛争以降、継続的に経済制裁に直面しており、これへの対応が進み、ある程度自己完結できる経済体制が構築されてきたともいえる。戦争遂行能力を削(そ)ぐことが制裁の目的で、国民生活への影響は意図していないとするのは詭弁(きべん)だ。それが真実であれば、慢性疾患の薬品やX線検査装置の輸出差し止めは必要なく、そうした手段により、ロシア国民の厭戦(えんせん)気分を高めることを意図していると考えるのが自然である。
しかし、依然として制裁が国民の厭戦気分を高める効果を見せていないことが、世論調査による強固なプーチン大統領支持で示されている(図)。調査への回答の拒否率が高まったとしても、それは水面下の話であり、表層には表れていない。
中国、インドと代替取引
周知の通り、ロシアには中国やトルコ、インドなど、代替となる貿易相手国が存在する。ロシアは月次の貿易統計を公開しなくなったが、22年のロシアの貿易黒字が前年の2倍弱(186%)に達したことが23年1月に示されている。これは貿易相手国側の統計から導かれる推計とおおむね一致する。欧米諸国からの輸入激減の影響が大きく、そ…
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週刊エコノミスト
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